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第57話
奎吾の手がシャツの裾から忍びこみ、希の素肌を撫でる。希を蕩かす奎吾の手が、愛おしむように自分の身体に触れている。それだけで、希は痺れるほどに気持ちがよかった。
胸の頂を引っかくようにカリっと刺激され、希は身を捩った。反対側の胸には奎吾の口がある。希は胸にかき抱くように、奎吾の頭を自分のほうに引き寄せた。
「・・・・・・蒲生。好きだ」
奎吾の頭に手を添えたまま、希は唇を押しあてると、素直に自分の気持ちを伝えた。相手をじらそうとか、もっと慣れたように見せようなどの計算はこれっぽっちも希の頭にはなかった。
奎吾がハッと息を呑む気配がした。希の言葉を確かめるように勢いよく上げたその顔がふいにぐしゃりと歪んだかと思うと、その腕の中にきつく抱きしめられた。
「・・・・・・気持ち悪かったらすぐに止めるから、してもいいか」
奎吾の身体に引き寄せられるようにして、臀部のあたりをつかまれる。
・・・・・・してもいいかって、つまりはそういうことか?
奎吾の意図を理解したとたん、希はかあっと赤くなった。男同士のセックスが、そこを使うことくらいの知識は希にもあった。もちろん具体的にどうするのかというのまではわからなかったが。それよりも、ここまできて希がその行為を望んでいないかもしれないと不安に思う奎吾を見ていたら、愛おしさが沸いた。希は笑った。
「いいぞお」
奎吾の肩に掬い上げるように、ベッドへと運ばれる。これまで何度か奎吾の部屋に泊まったことはあったが、そういう意味で寝室に入るのは初めてで、希はドキドキした。
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