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第3話

 うふふ、とスズランが微笑んだ。  うねる肉鞘に納められた陰茎が、絶妙な締め付け具合に悲鳴をあげる。  出したい、ということしか考えられなくなる。  出したい。  この気持ちいい孔の中で、思い切り射精したい。  しかしコックリングが邪魔をする。 「は、外してくれっ、イ、イかせてくださいっ」  恥を感じる余裕もなく、櫨染(はじぞめ)は腰を振りながら懇願した。 「反省してる?」  甘い声が、そう尋ねてくる。 「うぁっ、あっ、あっ」 「ハジメちゃん、もう、乱暴にお客様を抱いたりしないって、約束できる?」 「す、するっ、するからぁっ。もう外せって!」  ぬぷっ、ぬぷっ、とスズランの中でペニスをこすられ、放出できない熱に櫨染は苦しんだ。  喘ぎが無意識に漏れる。  気持ちいい。  気持ちいい。  性器が溶けそうだ。    けれど、達することができないため、快感が逆に苦痛になってくる。 「あっ、あんっ、ハジメちゃんの、あっ、カッコいいおちんちんは、こうやって使えば、あっ、あっ、ちゃんとこうして相手を悦ばせることが、ん、んんっ、できる、のよっ」  感じる場所に当たっているのだろう。  スズランが腰を震わせながらそう告げてくる。  だが、スズランが感じると、彼の後孔の絡みつきが強くなるため、結果、櫨染がつらくなるのだった。 「わ、わかったって! ああっ、あっ、イ、イかせてくれっ。イかせてくださいぃっ」 「うふふ。イイ子」    ぴたり、とスズランが動きを止めた。  ようやく射精できる、と櫨染は汗びっしょりの体からほっとちからを抜いた。  スズランの手が、香油の瓶を取る。 「……?」  怪訝に思って、その動きを目で追っていると、香油をまぶした指を、スズランが背後へと回した。 「……うあっ、て、てめぇっ」    櫨染の全身がビクンっと跳ねる。 「ど、どこに、指をっ、あっ、お、おいっ」  くちゅり……と。  ひそやかな水音とともに、スズランの指が……あろうことか櫨染の後孔へと挿入された。  挿れたことはあっても、挿れられたことはない櫨染である。 「う、嘘だろっ」  上擦った声で叫んだ櫨染に返ってきたのは、無情な笑い声だった。 「出せないならね、ハジメちゃん。出さずにイけばいいのよ」  甘く掠れた声が、そう囁いて。  櫨染の中で指が蠢き始めた。  ぐちゅぐちゅと中を探っていたそれが、ある一か所を掠める。 「ひっ」  櫨染の全身が緊張した。 「うふ。見~つけた」  微笑んだスズランがそこを重点的にコリコリと攻めてきた。 「ああっ、あっ、や、やめろっ」 「そんなこと言って……気持ちいいんでしょ? ハジメちゃんのおちんちん、あたしの中でビクビクしてるわよ」    指が増やされた。  やばい。  気持ちいい。  ペニスは相変わらず苦しいのに、スズランの手でそこを押されるとたまらない。 「あ~っ、あっ、あっ、と、止まれっ、あっ」 「うふふ……あっ、あんっ、イイっ、深いっ」    櫨染の腰が勝手に跳ねた。  それに穿たれたスズランが嬌声を上げるが、翻弄されているのは櫨染の方だった。  秘部にもたらされる初めての感覚に、頭がおかしくなりそうだ。  おまけに勃起状態の陰茎は、きつくとろとろの孔の中にある。  前と後ろを同時に刺激され、体の中心にマグマのような熱が溜まっている。それがぐつぐつと煮えたぎって、爆発しそうだった。    経験したことがないほどの、すさまじい快楽の波が櫨染の内側で起ころうとしていた。 「~っっっ! ダメだっ! あっ、ああっ、し、死ぬっ、死ぬぅっ」 「んんっ、う、ふふっ、死なないわよ、あっ、ハジメちゃんっ、そんなに突いたらっ」 「ひぐっ……ぅ、あ、ああっ、あ~っ!! イ、イくぅっ」  櫨染の腰が浮き上がった。  増やされたスズランの指が、弱い場所ばかりを徹底して攻めてきている。  淫靡な水音と。  スズランの弾んだ呼気と。  ペニスを包む肉筒の気持ち良さと。  達することのできない苦しさと。  ……後孔を犯す、指の感触に……。  櫨染の頭が思考することを放棄した。 「あ~っ、あっ、あっ、イ、イくっ、イくっ」    限界まで高まった快感が、出口を求めて全身を駆け巡った。  ごりゅっと、一番気持ちいい場所を強く押されて。  視界が真っ白に弾ける。  ビクっ、ビクっ、と断続的な痙攣が止まらない。    射精はしていない。  櫨染の陰茎はまだ勃起したままでスズランの体内に息づいていた。  精子を出すことなく、女のように、中イキをしたのだ……。  はぁはぁと荒い呼吸を繰り返しながら、櫨染はぼんやりとそのことを悟った。  まさか自分が……ドライオーガズムを味わうことになるなんて……。  茫然とする櫨染の耳に、スズランの甘い声が満ちる。 「雌イキできて偉いでちゅね~、ハジメちゃん。今度は男の子の方でぴゅっぴゅさせてあげまちゅね」    ふざけた口調でそう言ったスズランが、ぬちゅり、と櫨染の中に埋め込んでいた指を抜くと、軽く腰を持ち上げて、櫨染の陰茎を縛めていたリングをかちりと外した。  堰き止められていた精子がぐわっと込み上げてくるような、急にペニスに血が通ったような、なんとも表現しがたい感覚が、まだ思考が戻りきっていない櫨染に襲い掛かってきた。 「うぁっ、あっ、あっ、う、動くなっ」 「ダメよ。あたしも満足させてくれなきゃ。ああっ、あっ、あっ」  スズランが騎乗位で激しく腰を使い始める。  うねりを増した孔に吸い付かれ……櫨染の男根が膨らんだ。  後ろでイったばかりなのに、前も早々に爆ぜそうで……櫨染は呻いた。  絶頂に絶頂を重ねるような、途方もないエクスタシーが目の前に迫っている。 「や、やめっ……ああっ、あっ、こ、こわいっ、こわいぃっ」 「いいのよ、ハジメちゃん。イイ子はあたしの中に出していいのっ、あっ、あっ、あ、あたしもっ、ナカで、イきそうっ」 「あ~っ、で、出るっ、も、漏れるぅっ」 「あんっ、あっ、上手に、中出しして、ねっ、あっ、あっ、あっ、あああああっ」 「ああ~っ、イぐっ、い、イぐぅっ、ああああっ」  動物的な動きで、思い切り腰を突き出した。  直後にその瞬間は訪れた。    待ち望んだ解放は、深く。  いったことのないような到達点に、櫨染は押し上げられた。  高い場所まで駆け上った意識は、中々帰って来ることができない。  とろりとした目を上方へと向けて、櫨染はふわふわとそこを漂った。 「あ~あ。びしょびしょ。すごい量ね、ハジメちゃん。これに懲りたら、ちゃんと真面目にお仕事しなさいね。聞いてる? あらま。気持ち良さそうな顔。チャラチャラした金髪もそのピアスも、あたしは嫌いじゃないけど……ちゃんとしたら、もっと指名が増えそうな顔してるのにね。まぁ、おバカな子も、嫌いじゃないけどね」  うふふ、と笑ったスズランの赤い唇が。    しっとりと、櫨染のそれに重なった気がしたけれど。    夢なのか現実なのか、櫨染にはもう判断がつかないのだった……。         

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