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 よくぞそこまで大きくなるものだ。それが中に入り自分を責めたてる、その何ともいえぬ快感を思いだして与六の体が嬉しそうに震えた。  はやくあれが欲しい。  頭の中はそれでいっぱいとなった。 「あぁ、来い……」  手を伸ばして欲しがる与六に、勘太は微笑みながら中へと入り込んだ。  背中の彫り物は何度みてもウットリとする。 「与六よ、俺の腕ン中においでって」 「だめ。もう少し背中にくっついていたい」  そういうと背中の彫り物に口づけをする。 「まさか、俺より背中の彫り物に惚れたってぇことはねぇよな?」  勘太が体位を変換し、向かう合うかたちとなる。まるで嫉妬をしているかのように機嫌が悪い。 「……内緒だよ」  といってやれば、 「与六ぅ」  あまりに情けない声をだすものだから可笑しくて笑う。 「好きだよ、全部ひっくるめて」  出会ったあの日から勘太は与六の心を掻っ攫ったのだ。 「はぁ。よかった」  勘太が体位を変換し、向かう合うかたちとなる。 「俺の帰る場所がなくなると思ったぜ」 「帰る場所?」 「そうよ。おめぇの所が俺の帰る場所だ」  と心の臓のあたりを指さされる。 「出会ったあの日から、俺はお前の虜よ」  目を見開く。まさか勘太も同じだったなんて。 「なんだよぉ、そんな顔をされるとまたまぐわいたくなるぞ」  どんな顔なのかは自分ではわからぬが、勘太が望んでくれるなら本望だ。 「いいよ」  腕を回して引き寄せれば、参ったなと頭を掻く。 「いっとくけど、俺ァ貪欲だぜ?」  ぺろりと下唇を舐め、ぎらつきながら与六を射抜く。 「うん、おいで」  後は勘太のマラを咥え込み悦に入る。  それからずっと休みなく責められて、散々泣かされ、鳴かされて、声もガラガラ、身体は怠く起きあがれない。 「ちょいとぉ、仕事ができないじゃないのさ……」  お天道様が見ている。流石にそこまえまぐわうことになろうとは。 「あははは……、すまん」  勘太が胡坐をかいたまま頭を下げる。  だが、与六だって、もっと欲しいと強請って勘太のマラを離さなかったのだから同罪だ。 「でな、与六、わりぃんだけど」  手を合わせてこちらを窺うように顔を覗き込む。 「店に行くんだろう?」 「あぁ」  勘太をとられてしまうのは癪だが、彫師としての腕を振るう、そのことにわくわくとしている姿は可愛い。 「わかった。ただし、帰ってくるのはここだよ」  と与六は自分を指さす。 「おう」  着替えを済ませて家を出ようとするが、再び与六の元へと戻りかるく口づける。  それは予想外で、照れる与六に、 「へへ、いってくるわ」  と勘太自身も照れて頬を赤く染めていた。 「いっといで」  まるで夫婦のようだ。それがじわりと浸透し、胸がぽかぽかと暖かくなった。 <了>

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