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口内園
重たい瞼を開くと、木製の天井が見えた。
もう朝か。ベッドから起きて、朝食をとって、着替えて学校に向かわなければ。
面倒だが仕方がないと重い体に鞭を打つ、なんてことないいつもの日常。
「……違う」
とんだ勘違いだ。今は朝じゃない。記憶が正しければ、俺はさっきまで教室にいたはずだ。日直だったため、放課後一人残って日誌を書いていたのだ。
じゃあ、いつの間に帰ったんだ? 思い出せない。体を起こし、とりあえず辺りを見渡してみた。
「何処だ、ここ」
生活感のある、一般的な部屋。しかし、自分の部屋ではないことは確かだ。
「寒っ」
俺は服を着ていなかった。下着も身に着けていない。完全に全裸だ。わけがわからない。他人の部屋で全裸で寝ていたなんて、俺は何をしているんだ。
「あ、起きた?」
扉が開くと同時に声が聞こえた。思わず我に返る。
「ふふっ、そりゃそうだよね」
何よりも先に、この違和感に気づくべきだった。
「起きて慌てるとこ、見たかったなあ。もう少しトイレ我慢すればよかった」
今思えば、見慣れない天井がやけに高い。開いた扉も、窓も、置いてある家具まで異常にデカい。
目の前に立ち塞がる見覚えのある顔は、元々のデカさを遥かに上回るサイズだ。
「なんだ、これ……」
声が震えた。
なんだこれ?
胸中でもう一度発する。
もしかして俺、小さくなってんのか? いやいや、さすがに漫画の読み過ぎだ。ただの夢に決まってる。夢にこいつが出てくんのは気に食わないが、もう少ししたら目覚めるだろう。それまでの我慢だ。
「夢じゃないよ」
ずい、と気持ち悪い顔を近づけてくる。
デカい。直感で例えるなら、俺の顔と男の鼻の穴が同じくらいのサイズだ。俺もいまいちよくわかってないが。
「ねえ、聞いてる? 夢じゃないんだよ? これ」
リアルな夢だ。声、というか音まではっきりと聞こえる。巨大な口から漏れる息が臭う。
……臭 い? 音だけじゃねえのか。
「試してみる?」
開いた口からあるものが出てきた。なんてことないただの舌だ。しかし、サイズに限ってはただの、なんかではない。巨大な物体だ。違う、俺が小さいからそう感じるのだ。
これは、そういう夢だ。
「う……っ!」
そしてその湿った物体を、俺の全身に擦り付ける。回りくどい。すなわち舐めたのだ。
全身に唾液を擦り込まれるという未体験の感覚と、舌が離れてもなお残る唾液の臭いが気持ち悪い。
「美味しい……」
仰ぐと、心なしか頬を染めた男の顔があった。
「イケメンだから美味しいのかな? それとも速水 くんだから?」
「……気持ち悪 」
「もう一回いただきまーす」
俺の声はまるで聞こえていない。そりゃそうか。この体格差だ。俺が何か叫んだとしても、この男にとってはイヤホンの音漏れくらいにしか感じないんだろう。
そもそも表情を見る限りでは、聞こえたとしても行為をやめる気配はない。
「うっ」
再び舐められる。興奮しているからなのか意図的なのか、さっきよりも明らかに唾液の量が多い。顔に纏わり付いたそれを払う。水とは違う、粘り気のある質感。
「くっせ……」
嫌でも実感させられる。質感も音も臭いも感じられるリアルな夢、なんかじゃない。これは現実だ。俺は何らかの原因で嘘のように体が小さくなり、恐らく所有者であるこの男の部屋に拉致された。
とにかくここから抜け出すことに他ならない。だが、この体でどうやって。
「うん、やっぱり美味しい」
うっとりとした表情を浮かべ、俺を見つめる。その目を睨み返した。
「怒った表情 もカッコいい」
背後に、右手と言う名の大物が添えられる。抵抗する間もなく、唾液でてかる唇を押し付けられた。
「ぐっ……」
当の本人はキスのつもりなんだろうが、被害者の俺にとってはただの不快な行為でしかない。
最悪だ。どうして俺が、こんな目に。
「はあ、はあ……」
息切れを起こす自分の体に情けなくなる。そんな俺を、幸せそうに微笑んで見ていた。
「カッコいい……。カッコいいよ、速水くん。イケメンだよ。辛い、つらい……」
辛いのはこっちだ、という科白を飲み込む。というか息をするのに必死で話せない。それに、どっちみちこの男には聞こえない。
「僕ね、入学式の日に一目惚れしたんだ、速水くんに」
突然の告白に一応驚くも、これまでの仕打ちを考慮すると混乱しそうになるため聞き流す。
「同じクラスにはなれなかったけど、移動教室とか合同授業で一緒になる度にドキドキしてたんだよ?」
知るか、そんなこと。
胸中で返しつつも、思い当たる節はあった。男が言う教室や授業でのことは勿論、廊下などですれ違う度に視線をよく向けられるような気はしていた。
「でも今年、同じクラスになれた。嬉しかった。これからはずっと、速水くんのことを見つめていられる」
それが気持ち悪かった。目が異常な色をしているようで。
「僕の名前、知ってる?」
覚えるつもりはなかった。が、珍しいため頭に強くこびり付いてしまった。
男の名字は、肥満 。名前は知らない。本人に罪はないが、それに見合う体型をしている。気の毒だとは思っていた。さっきまでは。
「知ってるよね。ぴったりだもん、僕に」
Tシャツを脱いで露になった、だらしない肉に自ら触れた。弾力で波打っている。
「速水くんの体、僕のとは全然違うね。鍛えられててカッコいい。さすが陸上部」
肥満は語ると人差し指を咥え、少しの間それを舐めた後、俺に擦り付けた。再び唾液の臭いに包まれ、嘔吐く。
そのまま俺の体を手全体で包み込み、立ち上がった肥満は「そんな速水くんの体がどうしてこんなことになったのか、教えてあげようか」と言った。
「それがね、わかんないんだよ」
「は?」
思わず飛び出した。聞こえたのか、微笑む。その笑顔にゾッとした。恐怖からなのか、ただの不快なのか。
俺を掴んだままベッドに寝転ぶ。移動してようやく気づいた。俺はローテーブルに置かれているクッションに寝かされていたらしい。
「日誌書いてたでしょ? 速水くん」
俺を掴んでいる手を突然高く上げた。
「うわっ」
動く視界に、情けない声が出る。どんなに有名なアトラクションよりも恐怖だ。
「ふふっ、かわいい」
視界の次は、俺の体が動いた。というか落ちた。肥満が手を広げたのだ。棒高跳でも経験したことのない落下の感覚に、目をつぶる。
「うっ」
柔らかく弾力のある床に着地し、声が漏れた。のも束の間、再び体が宙に浮かぶ。視線を下に向けると、ぶくぶくと膨れた巨大な腹と目が合った。腹の弾力によって弾んだ、といったところか。
「やっぱできるんだ」
なんのことだ。
「デブのお腹ってトランポリンみたいでしょ? でも実際にできるのかなあってずっと考えてたんだ」
体重をかけると飲み込まれる足や手。肥満の呼吸に合わせて揺れる体。
人間の体に乗る、という非現実的な行為を実感させられる。
「んっ……」
太く巨大な指を頭上から押し付けられる。汗の臭いがする柔らかい腹に、うつ伏せの状態で体が沈んでいく。密着して息ができない。全身で感じる反発力が、今にも俺を吹き飛ばそうとしている。
暫くして背後からかかる圧がなくなり、即座に俺の体は高く跳ね上がった。なにがトランポリンだ。跳ねた、なんて気軽なもんじゃない。空中に投げ出されたような、それくらいの威力がある。
腹に着地した体は、さっきと同じく何度か弾んだ後にようやく落ち着いた。顔を上げると、興奮気味の肥満が嫌でも視界に入ってくる。
遊ばれている。恐怖や混乱が収まり、怒りがふつふつと湧いてくる。しかし、今の俺にはどうすることもできない。生かすも殺すも全ては、まさにこいつの手中にある。
「ごめん、話が逸れちゃったね。付き合ってくれてありがとう」
俺を腹に乗せたまま謝罪と感謝の言葉を述べた後、「今日……」と続けた。
「職員室で用事を済ませた後ね、教室に戻ったら日誌を書いてる速水くんがいたんだ。ううん、実際は書いてた、かな」
「眠ってたから」と笑う。
あの時、寝落ちなんてしなければ。そうすればこんなことにはならなかったのか。でも、この体になったことと何の関係があるのか。
「一人だしラッキーだと思ったんだけど、日誌もまだ途中だったみたいだし、部活もあるのに大丈夫なのかなーと思って起こそうとしたんだ」
「う、わ」
巨大な両手に、いとも簡単に捕らえられてしまう。今の俺は、こんなにも惨めで無力だ。
「でも駄目だった」
捕らえた俺を顔の前まで運び、唇に近づける。そして、キスをした。
「はぁーっ」
「ゔっ……」
臭い息を体全体に吹きかけられる。
「んぅ、んぁ、ちゅ、あぁ……っ、はぁ……っ、……ん」
気持ち悪い声を出しながら、俺の体に吸い付くようにキスを繰り返す。
「あ……っ」
思わず喘いだ俺を、こいつが見逃すはずなかった。
「気持ちいい?」
「……うるせー」
気持ち悪い、の一択だろ。なんでそう言えない。
「苦しんでる速水くん、唆る」
手の角度を変えたことによって、俺の体は肥満に対して垂直になった。
「脚だけ、いただきまーす」
ふざけた科白と共に、徐々に口の方へと位置を下げられる。
「長くて綺麗……」
足元に広がる口内。収まっていたはずの恐怖は、これまでの何倍、いや、何十倍にも膨れ上がった。
食われたら、死ぬ。
「うっ……」
脚だけ。宣言通り、太ももから下の部分だけ入った状態で、口は閉じられた。舌の感触が、脚全体に包み込むように伝えられる。少しこそばゆい。
「ぐ……っ、あっ」
「んふふ、もっと喘いで」
「っ、だ、黙……、うっ、くそっ」
ちゅっ、と激しい音と共に開放されるも、顔をまじまじと見つめられる。
「こんなに綺麗な顔を前にして平然となんて、無理に決まってる」
「開き直ってんじゃねえよ」
「うん、そうだね。だから、キスした」
寝込みを襲ったんだ、とわざわざ言い換えやがった。
「そしたらね、速水くんの体が突然小さくなっちゃって」
馬鹿げた話だと思うが、現に俺の体はそうなってしまっている。笑い飛ばすことはできない。
「消えたと思ってびっくりしたんだけど、埋もれた制服の中にいたからとりあえず僕ん家に連れてきちゃった」
「……っ」
くそ、油断した。話すだけで何もしてこないと思っていたら、突然脚を舐められた。
「いい反応」
ふふ、と不気味に笑う。
「制服はちゃんとハンガーに掛けてあるからね」
「んなこと……」
どうでもいい。続けようとした俺の科白は、容易に遮られた。
「んっ、ふ……」
キスされた後、今度は逆さに持ち替えられ、顔が下になった状態で口に近づけられる。
これは、まさか。
「顔だけ、いただきまーす」
はあ、と息を吹きかけられた後、にゅるにゅるとした質感と唾液が俺の顔、首、胸をなぞった。
片手で俺の足首を掴み、上下させる。舌と唇の感触に襲われ続けた。
「うっ、うっ、んっ、ん、ん、うん、うっ……」
気持ち悪い喘ぎ声が、俺の上下に合わせて響く。力が抜けていく。まるで吸い取られているみたいだ。
半身だけとはいえ、人間の口の中に入っている。さっきの腹トランポリンもそうだが、未体験が続き過ぎている。
「大丈夫、絶対に飲み込まないからね」
唾液まみれの俺に、説得力のない科白を今更投げてきた。
「僕は速水くんのことが大好きだから、絶対に死なせたくない。でも、ちょっと苦しい時もあるかも……」
笑ってんじゃねえよ。
「あーん」
わざとらしく言いながら、俺に向かって大きく口を開く。
絶対に飲み込まない。
それは食わない、ということではない。
「全部、いただきまーす」
俺をつまむ指から放たれ、虚しくも全身で口の中に飛び込んでしまった。
「わっ……」
舌はクッションのように俺を受け止め、そのまま包み込んだ。
「うぅ」
ぎゅう、と強く締め付けられる。抜け出したくても、どうしていいのかわからない。辺りは真っ暗だ。自分を含めどこもかしこも唾液まみれで滑る。下手に動いて、文字通り飲み込まれたり噛み砕かれるのだけは御免だ。
「ぐっ」
暫くして開放されたものの、叩きつけられたり、巻き付かれたり、投げ飛ばされたり。まるでモンスターのように、多彩な攻撃方法で襲ってくる。縦横無尽に口内で遊ばれている。今の俺は飴玉か何かだ。
ぐちゅぐちゅ、と汚い音が聞こえたと思ったら、唾液の量が激しく増えた。どうやら、濯 ぐような動作をとってみるみたいだ。
冷静な判断ができている自分に呆れる。唾液の質感と臭いは気持ち悪いが、もう嘘はつけない。
こうしていただかれている間にも、俺のペニスは反応してしまっていた。体が喜んでいる、ということだ。しかし、こいつの口の中で放つのは、負けたような気がして癪に障る。
何の意地だ、とツッコミを入れるも譲るつもりはなかった。我慢だ。ただ、耐えた。
「うあっ! くっ……」
口内の俺の様子を把握しているとでもいうのか、舌の動きは激しさを増した。膨張しているが故に場所がバレてしまったのか。舌先でそこばかりを攻めてくる。優しく、甘く、探るように。
「う……っ、ああっ、んっ……」
悔しい。何もできない自分に腹が立つ。でも気持ちいい。悔しい。虚しい。
「うっ、くそっ……、はあ、ん、うっ」
完全に勃起がバレた。舌の動きは静かになり、いやらしく急所のみを先で撫でてくる。
されるがままだ。逃げる力も残っていない。そもそも逃げられる範囲が狭すぎる。どうせあっさりと捕まってしまう。喉の方へ落ちるわけにもいかない。
「ふぅ、うっ、ああっ」
ちくしょう。ヤバい、出る。負ける……。
「あっ、あっ、あっ……、くっ、んっ、ああ……っ」
限界が来た。達してしまった。
舌先と目が合う。本当にモンスターだ。満足そうに笑っている。ように見える。
「くっそ……」
視界が揺れた。転がるように舌を滑り、体は柔らかい布の質感に覆われた。クッションだ。どうやら吐き出されたらしい。
「ふふっ、お疲れ様。僕の勝ちだね」
やっぱりわかっていたのか、こいつ。
「ふざけんな」
「でも気持ちよかったでしょ?」
うるせえ、という科白が何故か出て来ない。何故だ。まさに今、言おうとしたのに。
体に、違和感を覚えた。
「うそ……」
目の前には、そう呟いてショックな表情を浮かべる、随分と小さくなった肥満の姿が。
違う。俺がデカくなったんだ。元の大きさに、戻れたんだ。
「俺、戻った……?」
クッションから立ち上がり、唾液まみれの手や腹、脚を確認する。一応匂いも確認した。ちゃんと臭う。
「勝ったのは俺の方だったみたいだな」
「な、なんで……」
落胆している肥満を見下げる。
「知らね。イッたからじゃね?」
信じたくはないが。
「ホントだ、大きい……」
伸ばしてくる手を払い除けた。「痛ーい」と大袈裟に痛がる演技をしてくる。
「なあ、肥満。立って」
「え、なに? 別れのハグとか? どうしよう、ドキドキしちゃ……」
気持ち悪い科白を遮り、膨れた腹に蹴りを入れた。弾力に若干押し戻されたが、ちゃんと効いたらしい。肥満はどすん、と激しく尻餅をついた。
「あー、スッキリした」
俺がそう呟きながら制服に着替えている間、蹴られた腹を擦りながら「あのさ」と尋ねてくる。視界に入れないよう背を向ける。
「口の中じゃなくて、外で射精したら戻らなかったのかな?」
「知らねえ」
「気にならない?」
「ならねえよ、馬鹿」
背後から「試してみる?」と、聞き覚えのある提案が聞こえ、振り向いた。振り向いてしまった。
唇が、重なった。
馬鹿は、俺だ。
「んっ、んん、あっ、はや……、み、くん……」
そんな声で呼ぶな、気持ち悪 いんだよ。でも、なぜか抵抗できない。なんでだ。
徐々に、意識が遠のいていく……。
「うっ……」
案の定、意識を取り戻した時には既に口の中に入れられていた。そして、再び呆気なく舌と唾液に襲われ続けた。
「ああっ、あっ」
二度目で少し慣れてしまっているのか、恐怖心はなかった。あるのは快感だけ。悔しい程に。
ペニスも容易に育つ。きつい。あともう少しで出る、といったところで掌に吐き出された。
「どう? 出してない?」
この体格差じゃ、抵抗などあったものじゃない。
「出してないか。じゃあ……」
「うっ、わ……!」
変な声が出た。巨大な唇が、むくむくと育った俺の先をちゅうちゅう、と吸い出した。
「うぅっ、くぅ……、あっ、ああっ、はぁ、ん……」
早く、早く出せ。こいつの口の中に。
「ん……っ」
出た。しかし遅かった。唇は既に俺から離れていた。体が戻る気配はない。
「くそ……」
「ずっと口の中に入れておけないのは残念だけど、君はもう僕のものだ」
にやり、と笑った後に頭上から唾液を垂らされた。ねっとりとした液体に全身が包まれる。
「速水くんはモテるからなー。言い寄ってる女にはうんざりしてたんだよ」
「うっ……」
上半身を咥え込まれ、扱くような動作で体を上下に動かされる。
「うっ……、くっ」
出たり入ったり、時に、滴る唾液を掬うように舐められたり。
「もう、誰にも見せてあげない」
勝手なこと言いやがって。
そう思うのに、言いたいのに。快感が俺の口を塞ぐ。
ぢゅっ、と音を立てて俺を唇から離し、目を合わせてくる。
「速水くん、ごめん」
「今更かよ」
「違うんだ」
「あ?」
「飲み込んでいい?」
耳を疑った。
死なせたくない。さっきとは正反対の発言をしやがった。
「速水くんを僕だけのものにしたい」
「話が違えだろ」
「カッコいい速水くんが悪いんだからね」
大きく口を開け、そこに俺を運ぼうとする。
「お、おい! やめろって! やめ……」
視界は暗くなった。纏わりつく唾液が「最期」を実感させる。
「んん、んっ、ああ、うん、美味しい」
たっぷりと包まれた後、視界が明るくなり、唾液越しに満足げな顔が見えた。
「やっぱり、バイバイするのは惜しいな」
そう言って長い長いキスをしてくる。
「僕と一緒に暮らさない?」
「嫌に決まって……、うっ」
どんなにそう断っても、顔を、首を、腕を、腹を、脚を舐められると、反応してしまう。
「ここは素直だね」
「うあ……っ」
「いただきまーす」
飛び込むように、再び口内に入る。
俺はもう、ここから帰れない。
完
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