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第2話

「薬よし!…戸締りよし!…忘れ物…なし!行ってきます!」 ついに、社会人となった。 一人暮らしもはじめ、自分自身の管理を完璧に行える環境ができた。 悩み事、友情、仕事、恋愛、全て一つ一つゆっくり1人で考えられる。 「あら、要くん。早いのね」 「あっ!大家さんおはようございます」 「気をつけて行ってきなさいね」 「ありがとうございます!」 自分がこれから働いていくところは、子供のおもちゃから大人のおもちゃまで全て扱っている、おもちゃ企業の本社。 本社では、おもちゃの管理、制作などを行っている。 今日から俺はそこでお世話になる。 大人のおもちゃに関しては昔を思い出す場面もあり、仕事どころでなくなるため、子供のおもちゃのみ任されている部に入れてもらった。 ここの社長はαではあるが、こういうことに対しすごく優しい人だった。 「えっと…コンコン…おはようございます。今日からこちらの部に入った佐倉要と申します…」 「おおおお!!…えっと今部長居なくて笑」 「あっ!待ってますんで…」 「呼んでくるよ」 「ありがとうございます!!」 さすが、子供のおもちゃの部。 そう思ってしまった。 朝から持っていた不安が一気に飛んでいき、ホッとした。 緊張も抜け、人間関係上はやって行けそうだという自信がやってきた。 「あっ!こっちですよ部長!」 「おおっ…んと?…おお!」 「えと…」 「あ、えっと部長の片原さんです!」 「片原です。君が佐倉くんだね?」 「あっ!!はい!!今日からよろしくお願いします!!」 「よしよし、いい返事だね。じゃあ後は亜島さんにお願いするよ」 「ぶちょぉぉう汗…ううっ…」 「ん?」 なんとも賑やかな職場だ。 2人しかみていないが決めつけてもいいくらいのゆるさ。 さらにホッとした。 「えと、亜島っていいます。とりあえず、佐倉さんはこれを…」 「はい!」 その後、たくさんの方に挨拶をしながら、初日を終えた。 やはり、ここは賑やかだ。 みんな、元気だった。 心配しなくてよさそうだ。 「…」 だが、ひとつだけ気になることがある。 「うっ…」 視線を感じる。 その視線は誰かからなのかは分かってはいる。 だが、なぜそんなに見てくるのかは分からない。 「…あの…小鳥遊さん?なにか用ですか?」 「いえ。」 小鳥遊夜琉さん。 眠そうな目に、つんつんとした髪の毛が特徴。 この人は俺よりも5つ歳上で、ここの会社にはもう既に3年以上居るという。 この人に今日1日中見られながら仕事をこなしていた。 「佐倉さーん」 「はい!」 初日出勤のため少し早く帰って良いと言われ、帰りの支度をするが、やはり視線は消えない。 本当にわけがわからない。 「じゃあ、お先に失礼します!…ツッ!」 「!!」 んっ… 発情期が突然来るのは昔からだった。 「あれ?佐倉さん?顔赤いけど大丈夫?」 「だっ…い……」 「…亜島さん。俺が玄関まで送ってきます」 「あ、お願い」 「はい」 小鳥遊さんに支えられながら部を出た。

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