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雨に呼ばれて…
「やば、降ってきた!!」
下校の途中、あと家まで5分って所でいきなり降ってきた雨。まぁ、今日は一日どんよりとした天気で降るなとは思ってたんだけど。
「あー、もうずぶ濡れだ…」
不幸だと思った雨は、しかし、俺に不思議な出会いを運んできたんだ。
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雨宿りに、公園の東屋へ駆け込んだ。
ずぶ濡れになった制服、
「あーあ…」
1人だと思って盛大にため息をついたその時。
「急に来ましたね。雨。」
「!?」
どうやら東屋には先客が居たようで、気づかなかった俺は急に声をかけられて大袈裟に驚いてしまった。
「驚かせてしまってすみません。」
「い、いえ…」
振り向いた先に居たのは、綺麗な男の人。
男性に向かって綺麗だなんて普通言わないのかもしれない。だけど俺はその人を一目見た瞬間、綺麗だ、と思ってしまった。
でも、なにか違和感がある。…なんだ、刺青?タトゥー?首筋に鱗模様が…
「気づきましたか?」
「え?」
綺麗な人は淡く微笑んで、俺にこんな事を言った。
「雨が降っている間、というのは不思議なもので普段は見えないハズのものがなんのイタズラか見えてしまうんですよ。」
「え…じゃあ…」
「君が私の首を凝視しているのは、この模様が気になるからでしょう?これは、刺青でもタトゥーでもありませんよ。本物の鱗です。」
おかしな話なのに、何故か惹き込まれる。
「ここの公園の奥に、小さな滝と池があるでしょう。私はそこに住んでおります、水龍に御座います。」
嘘か本当か全く分からないけれど、揶揄う様な笑みを向けられた途端心拍数が跳ね上がる。
「…お兄さん、名前は…?」
「信じてない方にはお教え出来ませんね。」
「いや、だって…」
「ではこうしましょうか?」
それは一瞬だった。
お兄さんの周りの空気が揺れて、輪郭が曖昧になる。次の瞬間には、お兄さんのいた所に一匹の白龍が佇んでいた。
「これで信じて貰えましたか?」
「し、信じた…から、名前教えてくれよ…」
「いいでしょう…私の名は…」
愉快そうに笑ったお兄さんの口から零れた音を俺は絶対に聞き漏らすまいと、雨音に紛れないように耳をすませた。
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「一目惚れだったんだろうなぁ。」
もう慣れた少し冷たい肌に体重を預けながら、雨音に呼び覚まされた記憶。
「私もですよ。だから賭けで声をかけた。」
「初めて聞いたな、それ。」
あの日がなければ出会わなかった俺と恋人。
この出会いを奇跡と呼ばず、なんと呼ぼう。
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