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第1話
あれこれ愛撫が済んで、いざ、という段階になった時だった。
「後ろから入れるほうが痛みは少ないそうなんですが、申し訳ございません。正常位で入れますね?」
「え?」
なぜ?
初めてって、フツーオレに負担のないやり方でするもんじゃねーの?
あえて負担の大きいやり方選択するって、こいつオレのこと嫌いなの?
疑問符の浮かぶオレに、流伽はにこやかに言った。
「最初で最後の周防さまの処女喪失の表情を見逃したくないので」
「はぁ!?」
しょ、処女って! 喪失って!
いや、まぁ処女は処女なんだろうけど!
てか「表情見逃したくないので」ってなんだよ、変態か!
「入れますね?」
「ちょ、ま……んぁ……!」
オレの返事を待たずして、流伽は勝手に強引に突っ込んだ。
「ふ……ん……」
でか! さすがハーフ!
尻へのダメージがデカい!
流伽がさんざんほぐしてくれたおかげか、痛みはほぼないのだが、違和感がすごい。だって本来出すところであって、何か入れるところではないもんな。初めての経験にオレの尻もびっくりだろう。
いや、尻を本来の用途以外で使ったのは初めてなので、比べようがないんだけど、確実に日本人の平均よりはデカい。
見たら怖くなると思って、見ないようにしていたのではっきりは分からないのだが。
「ふふ。やっぱり後ろからにしなくて正解でした。可愛いです。周防さま」
「……うるせー」
オレに突っ込んだまま、流伽はしばらく動かなかった。慣れるまで待っていてくれているらしい。
「……いいよ。動けよ」
動かないとイクにイケなくて昂ったものが辛いのか、苦しそうな流伽を見てられず、オレは頬に手を伸ばした。
「もう少し待ちたかったのですが。申し訳ございません。お言葉に甘えて」
流伽はゆるゆると腰を動かし始めた。だんだんと緩急をつけた動きになってくる。
ものすごく気持ちがいいわけではないが、気持ち悪くもない。まぁ初めてだし(流伽は知らないが)それで気持ちよくなるのは難しいだろう。
とりあえず流伽がイケばいいや。オレはもう、さっき流伽にさんざんいじられてイッタし。
のんびり構えていたオレはある一点を突かれた時、背筋をのけぞらせた。
「んん……!」
明らかに他の部分を突かれた時とは違う快感だった。
「ここが周防さまのいいところなのですね?」
待て。目を輝かせるな。
流伽にあるはずのない耳と尻尾がぱたぱたしているのが見える。ゴールデンレトリバーだな。血統書つきの。
オレの明らかに違う変化に気づいた流伽は、執拗にそこを突いてきて。
「は……ん……」
さっき達してだらんとしていたオレのモノが、だんだんと硬度を増してくるのが分かる。
「あ……や、もう、やめろ! このままだとイク、イっちゃうから、あ!」
いやいや、とオレは首を振る。
さっきイッたのに、またイクのは恥ずかしい。流伽は一度も達していないのに。
てか、流伽にも気持ちよくなって欲しい。
「いいですよ。イッてください。周防さま」
それなのに流伽の責めは激しさを増すばかりで。
「やだ、だって、オレばっかり! お前に気持ちよくなってほし……」
ふっと流伽が笑った。
「あとでたくさんイカせてもらいます。でもその前に、気持ちよくなっている周防さまの姿をたくさん見たいんです。……come for me」
「は……? ん……っ」
『オレのためにイッてください』。そう耳元でささやかれた途端、頭が真っ白になった。頭のてっぺんからつま先まで奔流が流れたようになって、あっという間にオレは達してしまった。
生暖かい白濁した自分のものが腹に飛び散っているのがめちゃくちゃ気持ち悪いが、疲れてしばらくは、すぐ近くにあるティッシュペーパーに手を伸ばすこともできなそうだ。
「あなたの気持ちよくなっている姿を見るのが、オレの何よりごちそうです」
嬉しそうに流伽はオレの額に口づけた。
フツーに口にされるよりも、なんか恥ずかしい!
それから流伽も達して満足したオレはそこで終了だと思っていたが、そうではなかった。普段だらだらと暮らしているオレと比べて、流伽の体力は底なしだったのだ。
何度も流伽に達しさせられて、疲れ果てたオレは意識を飛ばしてしまった。
★★★
「おはようございます。周防さま」
さわやかな笑顔の流伽に、いつものように起こされるオレ。
今日も満点のイケメンと、天然物の金髪がまぶしい。
「……はよ」
「お加減がお悪いですか?」
仏頂面のオレに心配そうな顔をする流伽。
イラ。
「お悪いに決まってるだろ」
「す、すぐに医者を呼びます!」
「呼ぶな!」
部屋から飛び出そうな流伽を慌てて呼び止める。
「昨日!お前が張り切ったせいでケツと全身痛いの!察しろ!」
医者に診られたら恥ずか死ぬわ。
「ああ、初めてでいらっしゃいましたからね」
流伽がほっと表情を緩ませた。いや、ここは申し訳なさそうな顔してほしいとこだけどね?
幸い今日は休日だから、休養することにしよう。
「てかさ、初めての相手にはもうちょっと自重しろよ。マジで」
「申し訳ございません。長年我慢してきたので、抑えが利かなくて。まだ若いのでお許しください。周防さまは体力つけましょうね」
全く申し訳なさそうじゃない顔で、平然と答える流伽。長年っていつからだよ? なんか怖いからここは触らないようにしよう……。
てかなんでオレが体力つけて流伽に合わせる感じになってんだよ。お前が控えろ。絶倫野郎。
「お食事ここにお運びいたしますか?」
「いやいいよ。行く」
動かないでいると病人みたいだし。余計弱りそう。
オレは流伽の手をかりつつ、よろよろしながらダイニングに向かった。
テーブルに並ぶ朝食は、トースト、サラダ、オムレツ、野菜スープ、フルーツ。あつあつのトーストにはバターがとろけているし、ぷるぷるの程よい半熟具合のオムレツめっちゃうまそう。かかっているのは単なるケチャップじゃなく、流伽特製のトマトソース。
向かいの席には同じメニューが並んでおり、流伽が着席する。最初は主人であるオレと一緒に食事はとれないと拒まれたのだが、「せっかく一緒に暮らしているのに、一人で食事を取るのは寂しい」と説得したのだ。
「いただきます」
バターの染み込んでいるトーストに、はちみつをのせる。パンによく馴染んでうまい。
オムレツのソースも最高。
「ふふ」
ルカが吹き出す。
「何?」
「周防さまはいつも美味しそうに召し上がってくださって、作る方としては嬉しいです。幸せな気持ちになります」
「そ、そうか?」
ふつーに食べてるだけだけど。てか、そんなこと言われたら気になって食べづらいわ!
流伽の視線をビシバシ感じつつ、必死で気にしないようにして食べ勧める。
不意に流伽の手がオレの口元に伸びる。
「ついてますよ? オムレツ」
「あ、ああ。ありがと」
手に持ったそれを、こともあろうに口に運んでしまう。
「ちょっ」
ティッシュに包んで捨てればいいだろうがー!
自分の食べかけ食べられるのって、すごく恥ずかしい。オレは思わず顔を熱くしてしまった。
「昨日もっとすごいことしたじゃないですか」
そんなオレをみて、クスクス笑う流伽。
「……うるせー」
流伽の言葉で昨日のことを思い出して、もっと顔を熱くしてしまう。
「お食事が終わったら、ベッドにお姫様抱っこで運んで差し上げますね。私の責任ですので。おやつにはドーナツをお作りしましょうか」
「……お姫様抱っこはしなくていい。今日は、プリンがいい」
少し開いた窓からさわやかな風が入ってくる。今日は久しぶりの晴れ。こんな日は外に出たくなるが、たまにはこんな晴れた日に家でのんびりするのもよさそうだ。
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