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第58話 『直×拓編』

side直樹 拓己の肩が小刻みに震えている。 小柄な体がなおのこと小さく見えて、あまりにも静かに泣くから俺は拓己をただ黙って抱き締める事しか出来なかった。 涙が俺の肩を濡らす。 声を殺して泣き続ける拓己の横顔をそっと見て、あぁやっぱり俺は拓己から離れられないと思った。 いとおしい。 拓己のことが。 拓己の全てが。 確かに晴くんのことを守ってあげたかったが、サヨナラと言われてもすっと引き下がれた。 でも… …拓己は違う。 魂が引き合うように俺は拓己を求めてしまうのだ。 「…できないよ…」 「え?」 俯いたまま拓己が言った。 「母さんを悲しませることも…」 溢れてもなお目に涙を溜めて俺を見る。 「…直樹と離れることも…」 ぽろぽろと透明な滴が頬を伝う。 涙で顔がぐちゃぐちゃになっても、なんでこんなに綺麗なんだろう。 舌で目の端に溜まった涙を掬い取った。 俺はこの人を愛している。 両手で優しく涙で濡れた拓己の頬を包んだ。

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