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第28話

【雪夜side】 風呂から出ると、星からLINEが届いていた。 俺の指示をちゃんと実行したらしいが、送られてきた写真を見た俺の感想は酷いものだった。 桜を撮って送ってくれとは言ったが、フラッシュ機能を使わず撮影された桜は真っ暗で。星の顔写真は、アイツが学ラン着ている卒アルの写真だったのだ。 ……なんつーか、お前は本当に高校生か? そう問い掛けたくなるほど、まるでネタのような写真を眺めて思うことは山ほどある。 普通、顔写真くれっていったら今時、自撮りで送ってくるもんじゃないのかと。フラッシュも使えないほどの機械音痴、またはド天然なのかと。 スマホなら、アプリで色々加工もできるのに。 この間、光から送られてきた写真は自撮りした光の顔がハートマークで加工してある写真だった……まぁ、それは即削除したけれど。 星の卒アル写真もレアだが、俺は今のアイツの顔がみたい。そう思い、俺は星にダメ出しのLINEを送り返す。 その後は、既読のまま時間が過ぎていって。 今頃、こんな俺のために一生懸命に1人撮影会でもしてくれてるのだろうか、と。そんなことを思っていたら、俺の顔は自然とニヤけていた。 やることもなく煙草を吸っていると、やっと星からLINEが届く。悪趣味、そう送られてきた言葉と共に自撮りした写真が1枚。 悪趣味ってのは否定しないでおこうと思いながらスクロールすると、さっきの卒アルとは大きく違った写真があった。 「へぇー、やればできんじゃん」 恥ずかしいのか、緊張か。 少し唇を噛むようにして、閉ざされた口元。 長い前髪はヘアピンで留められ、隠れていた目元がよく見える。そんな大きな瞳は、上目遣いでこちらを見上げていて。 ………なんか、仔猫みてぇーだな。 動物を愛でる趣味はないが、星を見ていると愛らしい生き物に触れたくなるような気分になる。 今アイツが近くにいたら、いい子だなって言って頭を撫でてやりたい。きっと、真っ赤な顔をして俯くだろうから。そんで、抱き締めてやって、おデコにキスしてやって、そっから耳、首筋、鎖骨に甘噛みしてって。 そこまで考え、俺はスマホをテーブルの上に置くと暴走した頭を冷やすように天井へ目をやった。 アイツが可愛い仔猫ちゃんなら、俺は盛りのついたオス猫ってとこなのだろうか。 俺、本当にゲイなのかもしれない。 けれど、冷静に判断してその考えはやはり違うと思った。俺がもしもゲイであるとすれば、俺はおそらく光に惹かれているはず。 男でも綺麗な顔をした光には何も感じないし、光以外の野郎に変な感情を持ったことは未だかつてない。それなのに、むしろアイツには、もっと触れてみたいとさえ思う。 ……意味、分かんねぇーわ。 俺は色々と悩み過ぎたせいで、せっかく自撮り写真を送ってきてくれたアイツに、LINEの画面を開いたまま返事するのを忘れていた。

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