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第30話

【星side】 一定のリズムで鳴り響くスマホのアラーム、煩く感じる音も振動もオレの眠りの邪魔をするけれど。 「……もう朝、え……もう朝っ!?」 オレはスマホのアラームで跳び起きると、慌てて学校へ行く支度を始めた。 昨日の夜は白石さんからの返事が気になって、でも結局いつの間にか寝ちゃってたから。 ご飯を食べて、歯を磨いて。 まだ冴えない頭を無理矢理起こすために顔を洗い、お気に入りのヘアトリートメントでオレは前髪を整えて。 自分の部屋へ戻り制服に袖を通し、まだ慣れてないネクタイの結び方に苦戦しながらオレはなんとかして身支度を整えた。 ……準備万端って、言いたいところだけれど。 昨日の夜、ダメ出しされてしまった桜の写真をもう一度撮らないといけないことを思い出したオレは、スマホを覗き見る。 けれど、白石さんからの返事はないままで。 自分から送れって言っときつつ、返信をしてこない白石さんに呆れながらもオレは桜の木と向き合うことにした。 レースのカーテンを開けると、朝の陽射しが桜をキラキラと輝かせていて。ピンク色の小さな花達一つ一つに、降り注がれる朝の陽射しはとてもキレイだったから。 こんなにキレイなら、白石さんも喜んでくれるかもって。そう思いオレは何枚か写真に収めると、その中から1番キレイに撮れた1枚を白石さんに送った。 昨日、会ったばかりの人なのに。 強引に、強制的に、いいなりになるって話になっちゃったけれど……オレの頭に浮かんでくるのは、白石さんのことばかりで。 「せーいー、弘樹くん迎えに来てくれたわよ?」 ピーンポーンと独特な音を響かせ家のチャイムが鳴り、自室で白石さんのことを考えていたオレに現実を教えてくれたのは母さんだった。 「今からそっち行くって、弘樹に伝えて」 家の階段の下にいる母さんに聴こえるように、一際大きな声を出してオレはバタバタと音を立てながら階段を下りていく。 余裕があるようで全くない朝の時間は、なんだかとても早く感じて。玄関先で待ちぼうけしている弘樹を見つけたオレは、靴を履いて外へと駆け出した。 「はよ、約束通り迎えに来たけどちょっと早かったか?」 「ううん、大丈夫。それよりさ、昨日言ってたスポーツショップで弘樹は何を買う予定なの?」 白石さんのことで頭の中がいっぱいで、オレは昨日の弘樹のらしくない感じを忘れていたけれど。今日の弘樹は至って普通で、妙な違和感は感じない。 朝から元気ハツラツで、気分爽快。 そんな様子の弘樹は、問い掛けたオレを見てニカッと笑った。 「スポーツショップっていっても、今日行きたいのはスポーツブランドの店だから。服とか靴とか雑貨とか色々見る予定でいるけど、買うのはたぶんスパイク」 「そっかぁ……弘樹はさ、そのお店によく行くの?」 「うん、割りとよく行く」 「そうなんだ」 「まぁ、小遣いの少ない俺は見るだけが殆んどだけどな。それでも楽しく感じるってか、単純にシャレてんだよ」

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