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第45話

塊のベーコンと、ブロックのチーズ。 キッチンには見るからに美味しそうな食材が並び、これからどんな品が出来上がるんだろうと思うとオレはワクワクする。 お鍋に入っているのは真水で、それが沸騰するのを待つ間に白石さんは食材をカットしていくけれど。 ……上手、すごく早くて、しかもキレイ。 無駄な動きをせず、黙々と調理を進める白石さんの姿にオレは釘付けになっていくんだ。 カットされたベーコンとニンニクがオリーブオイルをひいたフライパンへとダイブして、食欲をそそられるいい匂いがオレの方まで香ってくる。 グレーターで卸されたチーズも、幅広タイプのパスタも……それぞれの食材が白石さんの手によって1つの料理として生まれ変わる時、オレにとっては夢のような時間が経過して。 白石さんはあっという間に、とっても美味しそうなカルボナーラを作ってしまったんだ。 「……白石さんって、料理できるんですね。部屋もキレイだし、なんかすごく意外です」 「意外ってなんだよ、料理ぐらい誰でもすんだろ。部屋だってそれなりに掃除すっけど、当たり前ことだからな」 オレの隣りでそう言って笑う白石さんと、ソファーの前のテーブルに置かれた一人分のカルボナーラ。オシャレな部屋で、オシャレな人が作った、これまたオシャレな一品。 それに目がいってしまって、オレは白石さんの言葉を半分以上聴き逃していたけれど。 「……ひとくち、食ってみるか?」 「……食べて、いいの?」 優しく問い掛けられた言葉は、しっかりキャッチできたから。 「美味いか分かんねぇーけどな。ほら、口開けろ」 「いただきますっ!」 オレは、躊躇わずに、口を開けたんだ。 白石さんはフォークにパスタを巻き付けて、オレの開いた口に放り込む。 「……どうだ?」 厚切りのベーコンに、パスタに絡まるチーズと生クリーム、半熟卵のまろやかさと鼻に抜けていく黒コショウの香り……感想なんて言うまでもないくらいに、幸せな味が口いっぱいに広がって。 「めっちゃくちゃ美味しいっ!!」 目を輝かせてそう言ったオレに、白石さんは嬉しそうに微笑んでくれた。 「本当に、美味しいです……オレね、恥かしながら料理人を目指してるんです。高卒と調理師免許が両方取れるから、だから今の高校に進学を決めたんですよ。将来は、自分の料理で誰かの役に立てたらなって」 「お前、将来のこととかしっかり考えてんのな。まだ高一なのに、すげぇーじゃん」 「そんなことないです。オレの料理で、多くの人に幸せな気持ちになってもらいたいって……そう思ってるだけなので、まだ漠然とした夢なんです」 オレはあまりの美味しさに、マシンガントークで喋ってしまう。でもそんなオレの話を、白石さんはパスタを食べつつとても和かに聞いてくれた。 「こんなに美味しいカルボナーラ、オレ始めて食べました。白石さん料理とっても上手なんですね。オレ、白石さんが作る他の料理も食べてみたい」

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