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第84話

コインランドリーの乾燥が終るまで、凡その目安は40分。ある決意を早速行動に移した俺は、煙草を咥えて車中でボーッと時が過ぎるのを待っている。 車の窓ガラスに張り付く雨は未だに止むことはなく、スマホで天気予報を確認したところ明日の朝までこの雨は降り続くらしい。 晴れの日の夜より、雨の日の夜の方が暗く感じるのは俺だけなんだろうか。そんなことを思いつつ、俺は星のことを考えているのだ。 あの後、急に笑いだした星と俺は少しの会話を楽しんだ。夕飯は何にしようかと、そんなことを問い掛けた俺に、夕飯はいらないからその代わりに朝食をサンドウィッチにしてほしいと俺は星から頼まれた。 最初のうちはかなり恥ずかしそうにして、顔を見せてくれなかったけれど。星は料理の話に夢中になると、照れながらも俺と目を合わせて話してくれたのがとても印象に残っている。 抵抗されたわけじゃないが、同意の上で行ったわけでもない俺の悪戯。俺を感じて乱れる星の姿はエロかったし、星がちゃんと男の子だったことに対して俺はなんとも思わなかった。むしろ、俺の手で果ててくれたことに喜びを感じたくらいだ。 泣いたり、笑ったり。 アイツの情緒は不安定だったと思うが、それでも俺の傍から離れることはせず、部屋に漂う空気感がギクシャクすることはなかった。 明日の朝、サンドウィッチを作る約束をし、星には2度目のシャワーを浴びさせて。疲れた様子でベッドへとダイブした星は、そのまま眠りについてしまったけれど。 光が好きだと俺に訴えていたはずの星は今、俺の家のベッドで眠っている。俺にある程度身体を許した後で、下着を着けずに、だ。 その下着と星の服を乾かすために、俺はコインランドリーの駐車場で暇を持て余しているわけなんだが。どう考えても、星は俺のことを好いているようにしか思えなくて自然と溜め息が漏れていった。 自惚れだと捉えられれば、確かにそうかもしれない。アイツ本人の口から、俺が好きだと告げられてはいないから……でも、唯一、俺にも分かることがある。 それは、どうしようもなく俺が星に惚れているってコトで。気づいてしまったら止められない想いに、その重さを感じて、何故だか胸が少し苦しいように思う。 ……恋愛って、こんなにモヤモヤするもんなのか。 特別な感情を持たない相手と身体を重ねる時には、何も考えずに、ただただ行為だけを求められたのに。ある程度、欲が満たされればそれだけでサヨナラできたのに。 星を求めているのは、俺の方だ。 アイツが泣いた時、イッた後、俺から離れてしまうのではないかと、内心とても不安だった。 星には、拒否権がない。 今更ではあるが、出逢って最初に交わした口約束を思い返す。流されやすい性格というわけではなさそうだが、アイツは俺と違って真面目な思考の持ち主……となると、星は契約があるから渋々俺に従っていると考えることもできるわけで。 考えれば考えるほど、俺はドツボにはまっていった。

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