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第112話

【雪夜side】 あれから。 光からは毎日のように、変態だの、ショタコンだの、嫌がらせのようなLINEが届くけれど。これが光の祝福の形だと思って、俺はありがたく受け取ってやっている。 ……まぁ、返信はしねぇーけどな。 星とは、朝起きたら連絡を入れ合うのが日課になった。毎朝連絡する、なんて約束を交わしたわけじゃない。しかし、習慣になりつつあるソレは、お互いのタイムスケジュールの把握に繋がっていて。 今頃はアイツは学校で、昼休みを過ごしているんだろうと。そんなことを考えながら、俺はバイトが始まるまでの時間を潰すため、駅前のカフェでアイスコーヒーを飲んでいるのだが。 「……白石、お前さ、顔、ヤバい。イケメンが変態」 「イケメンが変態でナニが悪ぃーんだ、言ってみろ」 現在、俺は独りで有意義な時間を過ごしているわけではないのだ。イケメンだの、変態だの、俺に言いたい放題言っているのは浅井 康介(あさい こうすけ)、俺と同じ学部、同じバイト先、サッカー経験者と共通点が多い為、なんだかんだでよく絡む野郎。 「顔、ニヤけ過ぎだから。今の白石の顔を女の子がみたらソワソワすんぞ、きっと」 「俺には関係ねぇー、勝手にソワソワしとけや」 「お前、今日機嫌悪くね?」 機嫌を損ねているのではなく、単純に康介がうっとおしいだけの俺は煙草を手に取った。 「俺はお前とシフト代わった所為で、今週平日連勤続きで休みがねぇーの。俺が機嫌悪く見えるなら、それは全てお前の所為、お前が悪い」 「白石にシフト代わってもらって行ってきた合コン、ちょー楽しかったっ!!女の子と連絡先も交換できたし、俺はハッピーハッピーだ!!」 女にモテない女好きって、哀れだ。 中の中を絵に描いたような顔面と、それを引き立てることをしない無難な短髪、俺より明るいアッシュベージュの髪色。大学デビュー頑張りました、と言ってるような康介の外見は良くも悪くも普通なのに。 コイツがモテない原因があるとするならば、人の話を聞かないこと、話を理解する気がないこと、その前に理解できる頭がないこと……要するに、康介がバカだからだろう。 「お前のことなんざ、どうでもいい。LINE既読スルーされて、知らねぇー間にブロックされんのがオチだろ」 展開が分かり切っている話を、何故こうも楽しげに話せるのかが俺には不思議で仕方がない。けれど、その答えを導き出そうと思えば一秒もかからないことに気が付いた俺は、煙草に火を点けた。 「確かに、3日経っても返事来ねぇ女の子はいる。既読スルーされんのは俺にとって日常だから、俺は別に挫けねぇ……ってかさ、白石ってなんでそんなに人に興味ないワケ、俺はイケメンの考えが分からん」 「イケメン関係ねぇーし、それを言うなら、俺はお前のバカな思考が理解できねぇーけどな。まぁ、したくもねぇーケド……単純に、どうでもいい、興味ねぇー、そんだけの話だ」

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