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第17話

最初は、暇だったから遊んでやるだけのつもりだったのに。星の表情や反応がいちいち可愛くて、気づいたら素の俺が出ていたように思う。 俺に何をされるのか分からない恐怖心を抱えつつも、受け答えしようと必死になる姿も。初対面の相手だからか、俺があまりにも不審だったからかは分からないが……丁寧に敬語を使い話をする姿も、時々それがなくなってしまう様子も。 人形とは掛け離れ、しっかり息をして反応を見せる人間の姿がそこにはあって。俺から触れた星の唇は、驚くほどに熱く感じた。 そこからは、なんというか成り行き任せで。 男を抱く趣味はないはずの俺が、星を相手に散々なコトをやらかしたような気はするけれど。 あれだけ色々な表情をみせられたら、誰も人形とは思わないワケで。この手で、そのお人形とやらが色づく姿を見てみたいと……衝動的な感情に任せていたら、このような事態になってしまった。 面白いから、可愛いから、単純に興味を持ったから。俺の中でも理由らしい理由が見つからないまま、俺はかなり強引に星との関わりを持ってしまったが。 この先、俺はどうするつもりなのか自分でも理解ができない。けれど、面白半分で光が好きか尋ねたとき星の表情が、脳内で鮮明に再生されていく。 真っ黒な瞳が、ぐらりと揺れた瞬間。 特別な想いを隠し切れていない幼い表情は、あまりにも無防備で。 あの表情を、俺だけのモノにしてみたいと。 光へ向けられている特別な感情もなくなるほど、俺に堕ちればいいと。 自分でも分からぬ感情を星に見せることはせず、とりあえず今日からアイツは俺のオモチャとなった。 隣の部屋で、星は今どのような表情をしているのか考えると俺から自然と笑みが漏れて。誰に見られているわけではないが、俺はそれを隠すように煙草を取り出した。 愛用の煙草と、愛用のジッポ。 そのニつだけで、俺の気持ちは緩やかに落ち着きを取り戻す。咥えた煙草の先に火を点け、ゆったりと一息目を吸い込んでいけば、仄かに甘い香りが口内に広がっていく。 フィルター内にフレーバー入りのカプセルがあり、それを噛み潰すことによってブルーベリーの香りが際立つこの煙草。今までは銘柄をよく替えていた俺だが、コイツに出会ってからはコイツ一筋だ。 煙草の銘柄を頻繁に替える人は、光曰く浮気性らしいけれど。浮ついた感情で煙草を選んだことはないし、そんな感情で女を選んだこともない。俺は浮ついているわけではなく、むしろすべてに冷めていただけだ。 そんな自分の性格の悪さも、女の扱いのクズさも把握はしているけれど。冷静になってきた頭で考えてみると、今日の俺はいつにも増して最低だと思った。 そうは思うけれど、それはそれでこれはこれだ。あんなに可愛い反応をされたら、イジメてやるのが男ってもんだし。最近は俺もご無沙汰だったから、丁度いい遊び相手を手に入れた気分は些か悪くない。 光には悪いが、これから俺は少しだけ楽しませてもらおうと。このときの俺は、そんな浅かな考えしか持ち合わせていなかった。

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