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第66話

「ここが、ランの店」 広くはない駐車場に車を駐めた白石さんとともに、オレは車から降りると白石さんの声に頷き、そうしてオレの目に映る景色を確認する。 ログハウスのような、小さなコテージのようなとってもオシャレな外観のお店。オレが想像していた以上に、ランさんのお店は良い意味で普通だと思った。 話を聞いていた限りでは、もっと派手で賑やかな外観のお店を想像していたから。外から見ても落ち着きのあるお店にオレが近づいていくと、オレはある文字を見つけて白石さんに問い掛ける。 「……白石さん、看板がCLOSEってなってますけど」 「あぁ……気にすんな、開いてっから」 せっかく連れてきてもらったのに、お店が開いてないんじゃないかとオレは心配になってしまったけれど。白石さんは慌てる素振りを見せることなく、お店のドアを開けてくれたんだ。 「えっと、お邪魔します」 入店するときの挨拶に相応しい言葉が出てこなくて、オレは誰かの家に上がるような感覚で挨拶をする。お店の中はアンティークな感じで、褐色のライトが落ち着いた雰囲気を演出していた。 「気に入ったか?」 店内をキョロキョロと見渡しているオレに、白石さんはそう囁くとふわりと微笑んでくれる。 「もちろん、とっても素敵なお店ですね」 オレがそう言うと、白石さんは安堵した様子でオレの頭を撫でてくれたけれど。カウンターの奥から、すごく美人なお姉さんが出てきて。 「待ってたわよ、雪夜」 ……もしかして、この人がランさんなのかな。 店内のちょっぴり大人な雰囲気に酔いしれているオレは、お姉さんが誰を呼んでいるのか分からない。 でも。 「久しぶりだな、ラン」 白石さんの言葉で、やっぱりこの美人さんがランさんなんだってことと、ランさんは白石さんのことを呼んていたんだってことが分かって。 ランさんの容姿をまじまじと見つめたオレは、兄ちゃんがランさんに会って騒いだことに納得してしまった。白石さんにオカマだって言われてなかったら、男の人だって絶対に気づかないと思う。 大人な二人に囲まれて、オレ一人が子供っぽく思えて。どんな対応をしたらいいのか迷うオレは、白石さんの隣りでランさんに向かいぺこりとお辞儀をした。 「貴方が、光ちゃんの弟の星ちゃんね?」 「あ、はい……そう、ですけど。あの、どうしてオレのこと知ってるんですか?」 ランさんの声はとても優しそうな声色をしていて安心するけれど、兄ちゃんのこともオレもことも知っているらしいランさんに、オレは疑問を抱いてしまう。 「そこにいる雪夜から、ある程度のことは聞いてるわ。今から18時までは貸し切り状態だから、ゆっくり話しましょうね」 「ソレ、この店の準備時間なだけだろ」 「その時間に合わせて、わざわざ来たのは何処の誰かしら?」 オレに説明してくれるランさんと、気怠さ全開でランさんから視線を逸らした白石さん。二人の会話からなんとなく事情を把握したオレは、白石さんにもこんな一面があるんだなって思ったんだ。

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