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第132話

「お前が悪いワケじゃねぇーから、気にすんな。それより、逆に気を遣わせちまって悪かった……星はさ、弘樹から告白されたんだろ?」 「……うん、でもあのときは突然すぎて。オレはどうしたらいいか分からなくて、弘樹の言葉に甘えちゃったんです」 返事はまだいらない、と。 その言葉に従い、オレは弘樹の告白をしっかり受け止めることができなかった。 「返事、してねぇーらしいな。昨日お前たちの間で何があったのか、弘樹が詳しく話してくれた。どさくさ紛れの告白だったらしいけど、星の気持ちはどうなんだ?」 「えっと……最初は、冗談だと思いました。でも、本当はオレが冗談だって思いたいだけなんです。弘樹は友達だって、親友だって、オレは思ってるから」 冗談で、済ましてはいけないこと。 弘樹がどれほどの勇気を出して、オレに告白してくれたのか。それは分かりかけてきたけれど……今、オレの隣にいるのは弘樹でなく白石さんなんだ。 オレは白石さんのことが好きで、白石さんもきっとオレのことが好きなんだと思う。でも、オレと弘樹は友達で……弘樹の想いに、オレが答えることはできない。 そう思うと、オレは現実から目を背けたくなって。重い頭が段々と俯いていき、オレはどうしたらいいのか分からなくなってしまった。 弘樹のことを聞かなくちゃって、思っていたのに。今日、白石さんと会ったことで広がりを見せたオレの視野が、逆に自分の頭を混乱させている。 でも、白石さんはそんなオレの肩を抱いて。 白石さんの右胸に頬を寄せることになったオレは、白石さんからの言葉を無意識のうちに待っていた。 「光のときも、今回の弘樹のことも……星が驚くことばっかで、ゆっくり考える暇なんてなかったな。そんなときでも、お前は俺のことを気にかけてくれた。星のその想いを、俺は大切にしてぇーんだよ」 「白石、さん……」 「今はまだ、アイツの言葉に甘えていい。お前がちゃんと返事ができるように、弘樹なりに考えた上での時間だと思うから。無理に焦らなくても、大丈夫だ」 よしよしと、片手でオレの頭を撫でる白石さん。オレが不安なのも、悩んでいるのも、白石さんには伝わっているみたいだった。 すぐに、答えを出さなくてもいい。 いっぱい考えて、オレが納得できる答えを導き出せるまで。たくさん悩んでいいから、焦る必要はないんだって……そのために、弘樹がくれた時間を大事に使えって。 優しく教えてくれる白石さんは、言葉を続けていくけれど。 「星が弘樹のことを友達だと思うなら、お前は友達らしく弘樹と接してやればいい。変に意識すると、お互いにギクシャクすんだろ……まぁ、お前が弘樹のことを好きになっちまったら話は別だけど」 「そんなことっ……」 オレは今日、白石さんのことが好きだって実感したばかりなのに。白石さんに最後に言われた言葉を否定したくて、オレが顔を上げたときだった。 「っ…ん、ン」 ふわりと重ねられた唇が、オレの呼吸を奪っていく。不意打ちのキスに戸惑いつつも、確かに感じる白石さんの温もりに、安心するオレがいる。

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