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第84話  別れた……

  『灰谷くん、真島くんから何か聞いてる?』 「……いや」 真島の代わりに入っていたバイトの休み時間に、明日美からの電話で灰谷は真島と結衣のことを知らされた。 『突然言われて原因がわからないって結衣が泣いてる』 真島が結衣ちゃんに別れを告げた……。 「……オレ、今日帰りに真島に会ってくるわ」 『じゃあ結衣のこと……』 「結衣ちゃんのことは、オレたちがどうこうできる問題じゃないと思うよ」 『そうだけど。でも、理由ぐらいは聞けるでしょ?』 「そういうのは……。あの二人の事はあの二人の事だ。でも、真島が決めて結衣ちゃんにきちんと話したんなら、理由はどうあれ、変わらないと思う」 『そんな、それじゃ結衣が可哀想すぎる』 「……可哀想でも、それが人の出会いと別れだと思う」 『……そんなの冷たいよ灰谷くん』 冷たい。そうかもしれない。 「ごめん。休み時間終わる。切るよ」 『灰谷くん、また夜に電話して』 「……ごめん。約束できない」 灰谷は電話を切った。 電話すると言えばよかった。 いや、言えればよかった。 でも……。 灰谷の頭にあるのは真島のことだけだった。 結衣ちゃんよりも明日美よりもまず今は真島のことを一番に考えたかった。 真島のそばにいてやりたい。 灰谷はそう思った。

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