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プロローグ

「俺も限界だ……」  彼の芳しい香りとその一言で、悟った。  彼はもう決めてしまっている。  真摯な眼差しで見据えられて、それを見つめ返す。  言葉はなくとも分かった。  相手はアルファ。自分はオメガ。  アルファにこんな眼差しをされては、自分はもう逃れられない。  自分はこのアルファに抱かれるのだと、実感が押し寄せる。  必死に守ってきた境界線が揺らぎ始める。  僕は、この香りに身を委ねていいのかな……。  そう思った途端、潤の身体から力が抜けた。

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