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第1話

「最近、雨ばっかりだぁ…」 急に嘆き始めたのは俺の恋人。斎藤 葵(さいとう あおい)。彼とは幼馴染だった。病弱な彼は殆ど家の中に居てあまり外には出ない。 そんな彼と出会ったきっかけは、窓際で歌っていた事だ…。その歌に惹かれた。その歌に聴き入っていると、僕の母と、この家の人が一緒に帰ってきた。 俺の母と、葵の母親は昔からの友人らしく、同い年の子供がいるから一度合わせたいと話していたみたいで、その日のうちに葵と会った。 その日から何度も葵の家に遊びに行き、仲良くなったのだ。 「葵、歌って…」 「夏は僕の歌が好きなの?それとも声?」 「俺の可愛い恋人の葵が、俺のためだけにその綺麗な声で歌ってくれる歌が好きなの」 「ふふっ、そっか……。それじゃ特別に歌ってあげるねっ……。♪ーーー♪ー♪ー」 葵の母も病弱だったみたいで、二人目の子供を産みそのまま帰らぬ人になった…。 俺の父も体が弱かったみたいで、仕事での無理が祟り、末期の膵臓癌で手の施しようがなくて亡くなった…。 その時期はちょうど重なっていて、小学三年の時だった。俺の母と、葵の父は、お互い同じ痛みを抱えていた。 「ー♪ーーー♪ーー♪ー」 「……」 「夏…?」 だからこそ、お互いに支えあいながら暮らし始めた。そのうち、恋仲になり再婚して、俺と、葵は兄弟になった。よくあるような、ないような話である。 翌年には、二人の間に子供が出来た。俺と葵と父と義母それに義弟のみんなと血の繋がった子彼の名前は結(ゆい)と名付けられた。 「…夏?…寝るの?」 「ううん、目を瞑ってただけだよ」 「雨があがったら何処か行こうか」 「葵、体調は?大丈夫なの?」 「うん。大丈夫だよ。昔ほどは弱くないからね?まだ病弱だけど、一応、毎日学校に行けるくらいには、身体も心も強くなったもん」 俺たちは高校生になった。同じ学年、同じクラス。周りの好奇な目は痛かった。初めは、その視線に心を病んでいた葵も、今では少し大丈夫になったみたいだ。 葵の弟…、俺の義弟でもあるが、斎藤 薫(さいとう かおる)は小学生になった。まだまだ小さくて可愛い。そして、結も今年が保育園最後の年だ 「色々行きたいところはあるけど、公園とか、動物園とか、水族館。美術館や映画とかも一緒に見たいなぁ…。ショッピングとかもいつか行ってみたい」 「やりたい事いっぱいだねぇ〜」 「俺、梅雨が明けたら葵といきたいところがあるんだ。街外れの神社で一緒に虹を見たいな」 「うん。楽しみだねっ」 家族みんなで旅行にも行きたい。薫や結はまだ小さいけど、来年には結も小学生。記憶には残るだろう。幸せな思い出を作りたいな…。 前に旅行に行った時は、薫も結も幼過ぎて…、きっと覚えてないと思うから…。今度こそ同じ思い出を、みんなで幸せな思い出を作りたい… 「そして、神社でお祈りするんだ。この幸せが続きますようにって……」 Fin

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