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第4話

「やあ、波濤ーーいや、今は雪吹代表と呼ぶべきか。随分とまた早い返事だこと。僕の贈った画像は喜んでもらえたかな?」  その声を耳にしただけで、ゾクリとした悪寒が背筋をざわつかせた。だが、そんなことを言っている場合ではない。 「……高瀬さん! あんた、一体どういうつもりですか……! うちのホストに何をしたんだ!」  思わずそう怒鳴ってしまった。それを聞くと、受話器の向こう側では面白そうに笑う男の声がこう言った。 「いきなり大声を張り上げるだなんて、キミにしては随分と余裕がないんだねぇ」  まるで侮蔑するような嘲笑が更なる悪寒を煽ってくるようだった。 「彼は無事なんだろうな!? そこ、何処なんですか!」 「そうがなり立てないでくれよ。そんな狂犬のような声を出して……キミのイメージが壊れるじゃないか」 「あんた……ふざけないでくださいよ……! 彼を電話に出してくれ、今すぐ!」 「心配しなくても彼は無事だよ。紫月君とか言ったっけ? なかなかのイイ男じゃないか。まあ、キミには及ばないけれどね」  下卑た声が電話の向こうで嘲笑う。冰は今にも崩れそうな膝をギュっと掌で掴みながら、 「目的は……何ですか」  訊くまでもないことだが、とにかくはそう問うことで少しでも男の意識を『紫月』から離したかった。恐らく男の目的は自分なのだろうことが冰には分かっていたからだ。  それを肯定するように、男から返ってきた答えは――やはりという内容だった。 「いちいち訊くことでもないだろう? 目的はキミだよ、波濤」  現役時代には終ぞ知ることもなかったが、この高瀬という男は貿易会社を経営しているということだった。  羽田に物品保管の為の倉庫を所有しているらしく、そこに一人で出向いて来いとの要求だ。警察は無論のこと、周囲の誰かにこのことを漏らせば、紫月の無事は保証しないという。しかも、命の保証ではなく、貞操を保証しないと言い放ったのだ。  何ともえげつないことである。冰は取るものも取り敢えず、言われた通りにたった一人で指定された場所へと向かったのだった。 ◇    ◇    ◇

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