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先き立つ者 3
俊幸は数年前のある事情から家族との距離を置き、一切連絡を取らなくなっていた。すべてを投げ出して一から新しい生活を始める。それは簡単なことではない。
かつて務めていた企業からたんまりと退職金をもらったものの、そのすべては新たな生活への資金源になって、いまではほとんど手元に残ってなかった。
アルバイトを何軒か掛け持ちして何とか生計を立てているが、四十を過ぎた初老の男を雇ってくれるところはそう多くはない。
その上、元来プライドが高い俊幸はアルバイト先で何度かトラブルも起こした。
そのせいで仕事を辞め、金が尽きる頃に、また新しい仕事を探す。まさに惰性の塊だった。
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