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第170話 しるし 2
青と一ヶ月ぶりにセックスしたのが一昨日。
昨日は体じゅう痛くて、特に下半身なんか死んでるんじゃないかと思うくらいダルかった。
ダルさとケツの違和感はまだ残ってるけど、仕事しなきゃな~・・・。
今日は雄大さんと一緒に、新店が入る予定の大型ショッピングモールの下見に行かなきゃ・・・。
郊外だから、車で片道2時間はかかる距離。
「涼太もう出れる?早めに行かないと、帰り遅くなるしさ。あと、運転頼んでいい?俺さっき風邪薬のんじゃった」
「ハイ。大丈夫です」
地下駐車場に下りて、会社の車に乗り込む。
助手席に座った雄大さんの顔色が悪い事に気付いて、声をかけた。
「大丈夫ですか?早退したらどうです?オレひとりで行けますよ?」
「だいじょうぶ。昨日よりマシになってるから。それに、せっかくの涼太とのドライブデートだし」
冗談言えるくらいなら、平気そうだな。
「・・・ソウデスカ。じゃあまあ、向こう着くまで寝ててください。気分悪くなったら早めに言ってくださいね」
「悪いな。頼りない愛人でごめんなー」
誰が愛人だ!ほんっと、この人は・・・
マスクを着けて、眉間に皺を寄せてつらそうに目を瞑ってシートに寄りかかっている雄大さん。
しんどいなら無理しなきゃいいのに。
直角に近い助手席のシートが気になったオレは、運転席から手を伸ばして雄大さんの向こう側にあるレバーを引く。
思ったよりもシートが倒れて、驚いた雄大さんが腕に掴まってきた事で、バランスが崩れてしまい、雄大さんの腹の上に顔を打ちつけてしまった。
「ぶっ!・・・いてて。すいません、余計なことして」
鼻が痛い。鼻血出てんじゃねえか、これ。
ぎゅっと鼻を摘んで確認すると、幸い鼻血は出ていなかった。
体勢を立て直そうとしたところを、雄大さんの腕に捕まってヘッドロックされてしまう。
「涼太、頭ちっさい。子供かよ」
「雄大さんこそ、いい大人が車内でプロレスですか?車出すんで離してください」
「抱きしめてんだよ、鈍いなー。少しくらいドキッとしろ、豆柴」
「すいません。駄犬なんで」
するっと雄大さんの腕が外されて、オレは運転席に座り直してシートベルトを締め、眼鏡をかける。
雄大さんの体調が悪くて良かった。元気だったら何されるかわかんねぇし。
とにかく、久しぶりに雄大さんと二人きりだし、警戒はしとこう。せっかく青といい感じにラブラブ・・・だしな。
車を走らせてすぐに雄大さんは寝入ったようだった。
目的地のショッピングモールが見えて来たところで、雄大さんが目を覚ましてシートを起こす。
「・・・あー、寝たわ。薬効いてちょと楽になった。ありがとな。もうそろそろ着く?」
「もう見えてますよ」
「あー、あれか。結構でかそうだな」
「そうですね」
ショッピングモール内のシートが張られたテナント内に入ると、 何も無い白い空間が広がっていて、そこに搬入する什器の設置台数、種類、大まかなレイアウトを二人で話し合う。
「通路は広く取りたいし、開放感も欲しいから、ここは低層を縦に2×3で並べたいな。あと、入口は・・・」
仕事中の雄大さんは、真面目で的確で本当に頼りになる。セクハラさえなければ、マジ大好きな先輩なんだけどな・・・。
「涼太聞いてんのか?」
肩を組むように引き寄せられて、ふーっと耳に息を吹きかけられた。
「ぅわ!聞いてますよ!」
雄大さんは、肩を竦めるオレのシャツの襟元を指でグッと引っ張って、中を覗いてくる。
「狂犬が噛み付いた痕でいっぱいじゃん。つまんね」
「セクハラやめてもらえます?」
襟元をぎゅっと握ると、服を引っ張っている指が外れる。
「マジ生意気」
「ふぁっ・・・あっ」
いきなり耳の穴に差し込まれた雄大さんの舌の感触と濡れた音に、くすぐったくて鳥肌が立って、変な声が出てしまった。
あ!やばっ!
「こーゆーのをセクハラって言うんだよ。つーか何?今の声。そういうの、かなりキちゃうんですけどー」
横からがっちり体をホールドされてしまい焦るオレ。
仕事中だから気抜いてた!
こ、これは、またも大ピンチってやつなのでは・・・
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