72 / 112

第72話 初めての経験※

 自分に覆いかかる影、それに驚いて光喜は身動きできないでいた。けれどふいに身体を撫でられてビクリと肩を跳ね上げる。乱れたTシャツの裾から手が差し込まれて、思わず身をよじってしまった。  それでもその手は離れていかず、それどころか身体のラインを辿るように滑り落ちていく。そのあいだずっと小津は光喜の目を見つめたままだ。これは酔っ払っていて寝ぼけている状態なのは明らかだった。  素面の小津がここまでできるとは思わない。それでも眠って意識もない相手とするよりずっといい。両手を伸ばすと光喜はゆっくりと小津を引き寄せた。 「小津さん、もっと触って」  首筋にかかった息に肩が震える。それでも肌に吸いつくような感触に胸が騒ぐ。手のひらが身体をなぞるたびにそこから熱が広がった。 「光喜くん」 「……良かった、ちゃんと認識されてて」  耳元に囁きかけられた自分の名前にほっとして光喜は笑みをこぼした。けれど食らい尽くされそうな勢いで身体を貪られてそんな余裕はすぐになくなっていく。身体のあちこちを舌で撫でられ、噛みつかれ、吸いつかれ、上擦った声が漏れる。  泣き出しそうなか細い声を上げるたびに胸の尖りをしゃぶられて、次第にそこが甘く疼き出す。初めて感じるその感覚に光喜は涙を浮かべて広い背中にしがみついた。 「あっ、や、やだ、小津さん、駄目」  そこが両方とも赤く熟れる頃には上向いた光喜の熱はもう弾ける寸前だった。イケそうでイケないギリギリのところで放り出されて、また身体を貪られる。脚を担がれその内側にまで痕を残していく、その感触に光喜の身体はビクビクと跳ねた。 「……えっ」  直接触れられたわけでもないのに愛撫だけで達してしまった自分に頭が追いつかない。それなのに小津はさらに光喜を追い詰めてくる。ぬかるんでいた窄まりを撫でられて思わず腰を引いてしまうが、太い指がゆっくりと中へ挿し入れられた。  それは中の柔らかさを確かめるようにぐるりと内壁をなぞる。そして指が増やされるとまさぐるように動かされた。 「ぁっ、あっ……待って、そこ、ぁんっ、やぁっあぁっ」  やんわりと撫でられた場所が疼く。指先で軽く叩かれただけであられもない声を上げてしまい光喜は顔を火照らせた。けれど何度もそこを撫でられると身体がヒクつく。甘え縋るような声が漏れるとそれだけで恥ずかしさが増した。  それを誤魔化すように腕で顔を覆うが、それはすぐに伸びてきた手で遮られる。 「光喜くん、顔、見せて」 「……だ、駄目! 絶対いま変な顔だもん!」 「可愛いよ」  顔を背けようとするとまっすぐな視線を向けられ、手のひらで頬を撫でられた。さらにやんわりと目を細められて、紡がれた言葉に光喜は身体が沸騰しそうな気持ちになる。身を屈めた小津に頬やまぶたに口づけを落とされた時には失神しそうになった。  けれど再び指を挿し入れられ動かされると甘ったるい声を上げてしまう。 「やぁっ、ぁっ、小津、さん……駄目、もぉ、イキそう」 「いいよ」 「や、だ、指じゃなくて、小津さんの、ちょうだい」  高みに押し上げられて肌がざわめくけれど、光喜は必死に手を伸ばして小津を捕まえた。潤んだ瞳でじっと見つめれば、ゆっくりと瞬きをしたあと指を引き抜かれて、その代わりにもっと硬いものが押し当てられる。  見つめ返されて視線が離せない。じわじわと広げられていくような感覚に息を詰めてしまうが、ふいに抱き寄せられて身体の奥に熱が押し込まれた。 「あぁっ、……んっ、小津さんっ」  両手を伸ばして目の前の身体に抱きつくと優しく耳の縁に口づけられる。首筋や頬にも何度もキスをくれる。彼なりに気遣ってくれているのがわかって、光喜は抱きしめる腕に力を込めた。 「う、動いても、いいよ」  のぼせそうになりながら言葉を紡ぐと小さく笑う気配がして、そっと頭を撫でられる。そしてすり寄るように頬を寄せられた。くすぐったい感触に肩をすくめれば、唇が首筋を撫で、きつく吸いつかれる。

ともだちにシェアしよう!