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第1話

深夜0時をすぎた頃 コツンコツンと人気の無い路地裏を歩く音だけが響く。真っ黒のスーツを身に纏い、ボルサリーノを深く被っている高身長の男が不意に立ち止まり後ろを振り返る 「どちらさん?」 傍から見れば薄暗い街で幻覚でも見ているかのような光景だが声を発した男は確実に相手を捉えていた。貼り付けたような笑顔で糸目だったが返答をしない相手に痺れを切らしたようで、ゆっくり素顔に戻る 切れ長でグレーの瞳がただ一点を見つめているとゆらりと何が動いた 「気色悪ぃ。ジロジロ見てんじゃねぇぞ」 「いや、こっちのセリフやって」 ガタイの良い短髪で白髪寄りの銀髪の男が、頭を掻きながら気だるそうにスーツの男の前に立つ 白シャツにグレーのベスト、黒のズボンと皮のブーツ。両足には拳銃らしきものが装着されており、誰が見ても殺し屋にしか見えない風貌だ。そして何もよりも印象的だったのが真っ赤な瞳だった 「あら、真っ赤な目してはるんや。お綺麗なことで…」 「赤?どっちもか?」 相手が不思議そうに尋ねる。黒を纏った男はニコニコと不敵な笑みを浮かべて男に近づく 「おん、そうやで。両目が真紅に染まってはる。ホンマに綺麗やわぁ、僕のモンになってや」 「気色悪ぃ、今から殺されんだぞ。俺に」 「それは嫌やな。遠慮しますわ」 冷たく言い放たれた言葉とは裏腹に目の前まで相手が近づくが拒む事は無かった。ほぼゼロ距離で拳銃を胸に当てられてもなお笑う相手に、殺し屋はにため息をついた 「そのウザってぇ心の声どうにかなんねぇの?」 「何の事やろか?」 「見えてるし聞こえてんだよ」 「プライバシーも何もあらへんやん。今までの全部バレてたんや。ますます欲しいなぁ」 相手の能力をわかっていたかのような振る舞いだった。腹の掴めない男は自分よりも少し背の高い殺し屋に囁いた 「僕、能力いっぱい持ってるんよ。不用心に近づいたらアカンって先生に習わへんかった?」 「っ…!」 「おやすみ、羽汰くん」 殺し屋にポンッと胸に手を当てると全身の力が抜け膝から崩れ落ちた 「お前……だれ…」 「誰やと思う?でも2度目ましてやから思い出してみて」 意識を手放した羽汰を軽々と担ぎ、暗闇に消えていった 続く

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