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〇(回想)ホテルヴィガート(東京店)の裏口(五年前・昼過ぎ)
~智之入社二か月目~
誰も居ないところで智之がしゃがみ込んで静かに泣いている。
伏せた視界に高級そうな靴が二足映り込む。
見上げるとサングラスを掛けた男の姿(寛也)。
智之「あ、すみません」
客だと思って涙を拭い、謝る智之。
寛也「お前もここの従業員だろう? これやる」
長崎土産のカステラを寛也が智之に差し出す。(当時、出張から帰ってきた時だった)
智之「いえ、お客様に何かを頂くことは……」
ぶんぶんと手と頭を横に振る智之。
寛也「良いから」
智之「あぐっ」
切れているカステラを智之の口に突っ込む寛也。
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