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第30話
優紀は泣いていた。
そして俺は…泣いている優紀を見て、優紀の兄貴に対する愛を知った。
いや、優紀だけじゃない。
兄貴も………。
俺の知らない優紀と兄貴が一緒にいた数年間…最初は主人とペット…いや、兄貴の言うように、主人と玩具の関係だったかもしれない。
だが、この数年間の間に…本人達も気付かない内に愛が芽生えてなかったと誰が言える…?
だから、兄貴は優紀を解放した。
だから、優紀は兄貴を思って涙を流す。
「…優紀…」
俺は床に座り込み、黙って涙を流しているゆの身体に服を被せ、後ろからそっと抱き締める。
「…大丈夫…俺がいる。ここを出たら…一緒に暮らそう」
優紀は何も言わず、俺に抱き締められたままでいたが、やがておずおずとその腕が上がり、俺の服を握り締めた。
俺は優紀の涙が止まるまで、優紀をきつく抱き締め続けた。
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