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Ⅰ きれいな嘘⑤
「すまないね。飛行機、早い便がとれたんだ。いてもたってもいられなくて、君をさらってしまったよ」
「そんな……」
ダークスーツの怪盗の正体は、もちろん飯田先生。
「俺がいない方が仕事はかどってると思います」
「謙遜だね」
いや。実際、そうなんだけど~
優秀なαのみで構成された特殊部だ。
どうして俺なんかが入っちゃったのか、よく分からない。
この世界には、外見上の性器で区別する第1性の雄・雌
生殖能力で区別する第2性のα・β・Ωが存在する。
α・βは放精能力がある。Ωには受精能力があり、Ωだけが妊娠する。
殊に生殖能力に秀でているαは、他能力でもβ・Ωを圧倒する。
αは生まれながらにして、世界のエリートなのである。
俺も一応αなんだけどね。
社内でミス連発の~
「悠君、君に受けてもらいたい検査なんだけど」
「ハヒっ」
そうだった。
先生は検査のために遥々帰国したんだ。
「眉間に皺寄ってるよ」
つんつん
繊細な指が眉間をノックする。
「おやおや、赤くなってしまったね。熱があるのかな?」
「ワワワー」
「ここは公衆の場だよ。お静かに」
そうでした~
(俺、なに勘違いしてるんだよ。恥ずかしいな)
「少し冷やそうか……はい、あーん」
「あーん、、、ん?」
「あーんだよ。悠君はお口開けない?」
「だって」
先生の持ってるのは、銀色のスプーン!
チョコがたっぷりかかったアイスが乗ってるよ。
「君は熱があるようだ。喉を見たいのだけれど。あーん」
「ァーん」
「もっと大きなお口だよ」
「ァー……」
ぺちょ
「ほら。君が大きなお口を開けないから。アイスが付いちゃった」
口の端、チョコとアイスでベチョベチョだ。
「大きくなって恥ずかしいね」
チュプン
ねっとり生暖かい感触が口角を這う。
(なに……)
「もちろん、私の舌だよ」
耳元をそっと撫でた、吐息混じりの低音。
(俺ッ、先生に舐められているーッ!!)
プシュウゥゥゥゥー
「おや、頭から湯気出してしまったね。……君には治療が必要だ」
チュッ
額に舞い降りた淡い口づけ……
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