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①登場人物・ストーリー

【登場人物】 ◆苑巳辰典(えんみたつのり):29歳。苑巳組の若頭。あまり頭は良くない方。頭で考えるより先に身体が動くタイプ。厳つい顔と無鉄砲さで人に嫌われることも少なくない。 ◆植森朱華(うえもりはねず)(雅号:木蓮(もくれん)):25歳。若き書道家。書を揮毫(きごう)することが自分の人生だと思っている。ある日、姉である藤花(とうか)が自分の娘(1歳)を朱華の家の前に置いて失踪、それから朱華は一人でその子を育てることになった。 ◆植森藤花(うえもりとうか):28歳。朱華の姉。ある日、失踪してからずっと見つかっていない。 ◆植森葉菜(うえもりはな):1歳。藤花の娘。よくぐずる。 ◆佐藤(さとう):辰典の付き人、部下、辰典には甘党と呼ばれている。 【ストーリー】 《起》  苑巳組の若頭である辰典は、ある日、暇を持て余していて紙飛行機を飛ばし、先々代の書を額ごと壊してしまう。直ぐに新しい書を書いてもらおうと多数の書道家をあたるのだが、組と関わったことによって警察に目を付けられては困ると断られる。そんな中、一人だけ書を揮毫してくれる若い書道家が居た。雅号を木蓮と名乗るその青年は「梟雄(きょうゆう)」という言葉を揮毫し、報酬を受け取らずに帰ってしまう。辰典も苑巳組の誰もがその言葉の意味を理解出来なかった。 《承》  書家木蓮の揮毫中の雰囲気に惚れた辰典は木蓮を探し出し、金でなければ良いのだろう?と多種多様な物をプレゼントしようとする。そこで朱華(木蓮)のもとに赤ちゃんが居ることに気付き、金を受け取らなかった理由を聞く。書を揮毫する直前に他の書道家が断った理由を組の者が話しているのを聞いてしまったからだった。 《転》  これから子育てで必要になるだろう、とどうにかして遠回りしながら報酬を渡そうとする辰典。彼は赤ちゃんをあやすのも得意で、いつも泣いてばかりだった葉菜もすぐに泣き止んだ。そんな辰典に惹かれ始める朱華だったが辰典の暴力的な一面を見てしまい、離れようとする。  ちょうど借りていたアパートも満期になり引っ越さなければならなくなった直後、葉菜が熱を出してしまう。救急車を呼ぼうと思ったけれど、前に呼んだ時にこのくらいで呼ばないでほしいと言われてしまい、呼ぶことが出来なかった朱華は寒い中、見てくれる病院を探すことになった。気を張っていたため気付かなかったが、朱華もいつのまにか風邪を引いており、高熱で倒れてしまう。 《結》  目を覚ますとそこは苑巳組の屋敷で、目の前には辰典の姿があった。葉菜も朱華も苑巳組のかかりつけの医者に診てもらった後だという。それでも辰典の暴力的な一面を知っている朱華は葉菜を連れて出て行こうとするが、辰典はあの時のことは二人を守るためだったという。朱華の姉である藤花が作った借金を取りに来た男たちを追い払っただけだったということを聞き、朱華は辰典に謝罪する。「梟雄」という言葉についても良い意味のものではなかったと改めて書き直そうとするが辰典は止める。辰典はこれからも二人を守りたいと言い、朱華と葉菜を苑巳組の屋敷に迎え入れた。

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