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第4話

「それは星流が俺の運命の相手だからだよ」 …………………………はい? えっと、先輩大丈夫? まさか体調悪い?熱ある? 「あの日本屋に入った瞬間匂いで分かったんだ」 匂い? あ~、あの本屋不思議な匂いしたからな。 って、違うか。コレ先輩の香水の匂いだったし。 他に匂いしたっけ?先輩の匂いがキツ過ぎて分からなかったぞ。 「凄く甘くて全身が痺れる様な艶っぽい香り」 ん? 「えっと、先輩。言い難いんですが、それ先輩の香水の匂いだと思います。今もスッゴイ匂ってますし。ずっと言えずにいたんですが、多分付け過ぎですよ?香水」 あ~あ、遂に言っちゃったよ自分。 メッチャ失礼。 怒ったかな? 心配になり 「すみません」 慌てて謝ったが 「そうか、香水ね」 先輩は苦笑した。 漸く気付いたか、自分が付け過ぎていた事に。 だが次に先輩が発した台詞に僕は固まった。 「俺何も付けてないよ香水」 ……………………………………は? はぁあぁあ!? ならこの何とも言えない強烈な香りは何なんだ? 体臭か? でも他の誰も先輩の香りを気にしない。 翠葵に聞いても無臭だと言われた。 僕の鼻がおかしいのか? 「やっぱり間違っていなかった」 何故か物凄く嬉しそうな先輩のせいで脳内に沢山浮かぶハテナマーク。 一体先輩は何を言っているのだろうか。 「番には互いに互いだけが感じ取れる特殊な香りがあるんだ。そして触れ合うと軽い電流が走る」 番? えっと、だからさっきから何を言ってるんだ?先輩。 「星流。君は僕の運命の番だよ」 ダメだ先輩頭おかしい。 だいたい運命の番なんてそんな簡単に出逢える筈ない。 保健体育の授業でαとΩには運命の番が居ると聞いた。 基本βはβ同士か通常の異性間結婚で子供を作る。 αの女性は子供を産めるが男女関係なく産ませる事も出来る。 Ωの男性は子供を作る事も出来るが繁殖能力は極めて低い。 その代わり繁殖期は妊娠しやすく子供が産める。 運命の番は存在するが、なかなか結婚出来ないケースが多い。 運良く逢えても年の差が大きかったり、有り得ない位遠距離だったり、互いに他に相手が居たり、身分差や近親の為赦されない間柄だったりと理由は様々だ。 また、一度も逢える事なく一生を終える事もある。 同じ学校で年も近いとか、そんな都合の良過ぎる展開ある筈がない。 信じられないって顔で先輩を見ると 「星流」 先輩は名前を呼び、僕を抱き寄せた。 「……っ!?!?」 その瞬間、全身に走った凄まじい程の電流。 痛くはない。 痛くはないのだが、何だコレ。 ゾクゾクする。 「星流」 耳許で囁かれ 「ひぁっ」 変な声が零れた。 「ねぇ星流。俺に触られてどんな感じがした?」 聞かれ 「ビリビリしました」 隠す必要も無かったので素直に答えた。 「俺甘い香りも電流も星流からしか感じないよ。星流は他の人からこの香り感じた?」 いや、ない。 「先輩だけです。友人に聞いたんですが、友人は先輩からは何も匂いしないって言ってました。寧ろ無臭だと。他の人に触っても電流とか流れません。先輩静電気とか貯まりやすい体質ですか?」 「ハハハッ、もう。面白いな星流は。まだ分からないの?これは番だから有り得る事なんだよ」 え、そうなのか? 「分からないなら、学校や家で聞いてみな?」 じゃあね、先輩は優しく僕の頭を撫でるとクスクス笑いながら去って行った。 その日家で母に聞いてみたら 「それは間違いなく運命の番ね」 嬉しそうに微笑まれた。

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