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第10話 ※

 キスをしながら着ていたものを床へと落とす。  杉浦は真っ白な綺麗な肌をしている。それが松尾の欲を更にかきたてる。 「課長の肌、綺麗ですね」 「そうか。お前がこれをみて萎えなければそれでいい」 「萎えるところか、こんな感じですよ」  腰のモノを押し付ければ、俺もだと言って首に腕を回す。 「俺を愛してくれ」  頬を胸に摺り寄せて、下から覗き込む仕草はとても可愛い。 「はい。貴方が満たされるまで」 「あぁ」  もう寂しいのは嫌なんだと、切なげに見つめられる。  二度とそんな思いはさせない。  後を解し、中へと自分のモノを挿入する。  深い所までつながりあい、法悦な笑みを浮かべている。 「お前を中で感じる」 「今から、ですよ」  もっと感じるのは、と、中を突きあげれば、首に腕を回し欲して善がる。その姿は、松尾を高ぶらせて押さえを効かなくさせる。 「獲物を狙う獣みたいな目だ」 「肉食系って事ですか?」 「あぁ、ギラギラしている」  汗でぬれた髪を撫で、目尻に口づけをする。 「すごく、いい」  と囁かれ、身体中の血が沸騰したかのような感覚となる。 「俺を食い尽くせ」  濡れた真っ白な自分の身体を撫でてて松尾を誘う。  なんて色っぽくて厭らしいんだろうか。 「えぇ、貴方の奥深い所まで……」  心も、ここも、ね、と胸を指で撫でて中を突く。 「んぁ、もっと、もっと寄越せ」  ぎゅっと締め付けながら求められて、一気に高みにのぼる。 「ふっ、あぁっ」  互いに欲を放ち、中から抜くとそのまま杉浦の胸へと顔を埋めた。 「良かったぞ」  髪を撫でながら言われ、それが嬉しくて頬を摺り寄せる。 「ん、こら、くすぐったい」 「感じちゃいましたか?」  指で胸の突起を弄れば、杉浦がくすっと小さく笑う。 「なんだ、もう一度したいのか? お前とするこれは嫌いじゃないから良いぞ」  中にまで愛を注いでもらったし、と、とろりと流れ落ちる蜜を指ですくう姿に、放ったばかりの箇所に熱がたまりはじめる。  そんな事をされたらまた欲しくなる。  良いのかと彼を見れば、その目は自分を欲しがっていて、それを感じて再び杉浦に食らいついていた。 「足腰立たなくなったら面倒みますから」 「んっ、それは良い、な。それならば俺は甘えるだけだ」  こい、と、太腿を肩の上へと乗せる。  なんと色っぽい事か。 「お前が欲しくて奥が疼いていてしかたがない」  放った精で濡れた箇所は、松尾を欲しがりひくひくと動く。  それを見ただけで元気を取り戻す自分も、杉浦を欲しがっているのだろう。 「さ、またお前の愛を注いでくれ」 「はい、俺ので中をいっぱいにさせて頂きます」  とキスをすれば、嬉しそうに唇が綻んだ。 ◇…◆…◇  甘える事を覚えたかのように杉浦は、何処かしら体の一部を松尾にくっつけたがる。  テレビを見ている時は肩に寄りかかり、一緒に話をするときは手を握りしめる。  自宅に仕事を持ち帰った時は松尾に寄りかかってパソコンとにらめっこだ。 「可愛いですね」  つい、口に出てしまった言葉に、杉浦は眉をよせる。 「俺のどこが可愛い? 見た目も普通だし、おじさんと言われる歳になったし」  彼の見た目が普通なら、自分はどうなるんだとぼやきたくなる。  顔達もよく、落ち着いた大人の男性だ。それに年相応で良いと思う。 「まだ三十三歳じゃないですか」 「それでもお前より十歳は上だ」  どうやらそこが気になっていたようで、またつまらぬ事を考えているのではと杉浦を見る。 「歳なんて関係ないでしょう? こんなに好き合っているのに」  杉浦が不安に思うものはなくしていこうと、前に彼に言ったのだ。だから大丈夫だと思ってもらえるように彼の手を握る。 「あぁ、そうだな」  口角を上げる姿がさまになっていて、胸が高鳴る。 「この頃の杉浦課長は、人気なんですからねっ。時折見せる優しさに女子達がやられているんですから」 「そんなものどうでもいい。俺が惚れているのはお前だけだからな」 「それ、ズルい……」  照れた。  顔が熱くて両手で覆う。 「お前の方が可愛いじゃないか」  くすくすと笑い声をあげて、髪を掻きまぜられる。  杉浦とは同じくらいの身長で体格も似ている。だが、男前の度合いはかなり差をつけられている。 「課長のように良い男になりたい」 「十分に良い男だろう」  何を言っているんだと、微笑まれる。 「仕事、早く終わらせてください。俺とイチャイチャしましょうよ」  甘えるように首に腕を回して、後ろから頬を摺り寄せれば、 「わかった。俺は仕事よりお前が優先だ」  と軽く触れるだけの口づけをする。 「課長」 「なぁ、そろそろ二人きりの時は名で呼んではくれないか? 課長と呼ばれると会社にいるよな気持ちになる」 「そうですね。では、二人きりの時はお互いに名前で呼ぶって事で」 「そうしようか、雅臣」  早速、名を呼ばれて、照れくさくて顔が熱くなる。 「ヤバい、相当、グッときますね、これ」 「そうか。俺のこともグッとさせろ」  呼べと唇を撫でられる。 「征二、さん」 「……なるほど」  胸を押さえて上目使いで松尾を見る。 「予想以上にぐっとくるな、名前で呼ばれると」  こんなに愛しい人はいない。 「愛してます」  後ろから抱きしめれば、耳元に唇を寄せて「俺もだ」と囁いた。 【了】

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