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19(雷+妹/妹視点)

「何、その不服そうな顔?」 「………」 お兄ちゃんを雷君の所へと見送ってから数時間後に二人は帰って来た。お兄ちゃんはご飯を食べてお風呂に入ると、眠ってしまった。雷君は家に泊まることになっているのだが、もちろんのことお兄ちゃんと同じ空間で寝せるわけがない。 寝ているお兄ちゃんの寝顔を、熱い視線で見続ける雷君を引き離して、今私と二人でリビングに座っている。 「…過保護過ぎだ」 「怒ってる?」 「………」 「ふふっ。怒ってるんだ」 でも、駄目。 「まだ、早い」 「………」 「もう少しお兄ちゃんが武宮さんに慣れてからね」 「……慣れる?」 「二人きりだとお兄ちゃんまだ緊張してるでしょ?」 「………」 「それなのにキス以上のことをするのは許しません」 「……相変わらず手厳しいな」 「そうかな?」 「初めて会ったときのことを思い出す」 ……初めて会ったとき。 確かに最初の出会いは最悪だった。そしてお互い抱いた印象も最悪だっただろう。だって私が最初に雷君に掛けた言葉は…、 「「兄をストーカーするのは止めてください」」 思い出して言葉にすれば雷君と声が被った。 おかしくて笑えば、雷君も柔らかく微笑んだ。 鈍感なお兄ちゃんは全く気付いていなかったのだが、お兄ちゃんが大好きな私はその視線に気が付いた。真正面からストーカーを止めろと言ったときの雷君の表情は今でも忘れられない。 「…ここまで認められただけでも喜ばしいことか」 「そうだよ。雷君じゃなかったら絶対お兄ちゃんをあげなかった」 「順平は、俺が幸せにする」 「あら、私は?」 「…ああ、お前もな」 「ふふ、ありがとう」 「大事な妹だからな」 そう言って私たちは顔を見合わせて笑った。 血は繋がっていないけれども、雷君は私にとってお兄ちゃんと同じような存在だ。 「ありがとう。お礼として少しだけならお兄ちゃんの寝顔見てきてもいいよ」 「………」 気分良くそう言えば、雷君は無言で立ち上がり、お兄ちゃんが居る二階へと上がっていこうとした。 「手は出しちゃ駄目だよ」 「……善処する」 その言い方だとキスの一回や二回くらいは我慢出来ずにしちゃいそうだと思いながらも、二人が幸せならそれでもいいかとも思ってしまった。明日お兄ちゃんが起きたときの反応が楽しみだと密かに思いながら、私も寝ることにしたのだった。

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