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第1話

 暑くなってきた。そろそろ制服も衣替えになる季節だ。 「ぁっ……ぁ……ぁ…………んっ! んっ…………」  激しく腰を振りクロの上で乱れて見せた研磨は大粒の汗を流しながら彼の上に突っ伏した。 「満足した?」 「……クロこそ。俺ばっか動かせて自分はマグロなんて、いい身分だよっ」 「でもお前のモノの管理は怠らなかったけど?」 「ばかっ」 「ふふふっ」  しっかりとまだ繋がったままでふたりして微笑む。 彼のモノを抜き差ししている時にはモノをしごかれ揉まれていた研磨のほうが先に達した。達した時に穴が縮まり、それでクロのほうが満足する。いつもはクロがリードするのに今日は研磨が彼に跨ってコトをいたしたのは、ひたすら彼のリクエストからだった。そして今度は研磨のリクエストが始まる。 「抜いていい?」 「あんまり歓迎しないけど、仕方ないな」 「終わったんだからいいじゃん」 「いいけど」 「文句ありすぎ」 「いいからクロ、チュウして。うんと濃いの」 「うんと濃いの?」 「うん」  顔を近づけながら唇を合わせるとゆっくりと舌を差し込む。 研磨からのリクエストなのにクロはリードしてくれなくてひすらた研磨が舌を絡ませる。 「んっ…んんっ……ん……」 「ふふっ…ふ……」 「もっ…クロったら……」 「研磨は積極的だな」 「クロが消極的なだけだろ?」 「ズルい」 「ズルくない。お前がしたいって言うから……」 「だったらもうこんなことしてやんないぞっ」 「それは困る」 「だったらしてよ。ちゃんとベロチュウ」 「分かった分かった」  クロの手が首に伸びてきて首根っこを捕まれると引き寄せられる。そして今度はクロのほうから舌を差し入れて口の中を翻弄される。 「んっ…んっ……んっん…」  舌を絡ませて体を弄られる。 素肌を這う彼の指が心地よくて、いつまでもそうしていたくなってしまう。そしてさっきまで入れられていたソコに指を入れられて二本の指を広げられると思わず腰がねっくた。 「もう一回? おねだりする?」 「……どっちでもいいよ。クロはしたいの?」 「俺はもう大丈夫だけど?」 「大丈夫って?」 「もう回復してますよって意味。何回出来るか試してみる?」 「いい。あと一回したら終わりにして。でないとしないよ」 「分かった分かった。だから、な?」 「今度はクロが上ね。俺、もう腰クネクネさせるの疲れた」 「はいはい。手っ取り早くイきたいわけね。OK」  素早く体を入れ替えると今度はクロが上になって研磨を抑えつける。そして脚を割ったかと思ったら緩んだソコに挿入されて抜き差しを開始した。 「あっ…ぅ…ぁ……」 「感じる?」 「そんなこと……聞く?」 「見れば分かるけど、聞いてみたい時ってない?」 「それが今……ってこと?」 「そう」 「……うん。いい感じ」 「もっとして欲しい?」 「どっちでもいいけど」 「して、って言って」 「して」 「……」 「満足?」 「満足」  行為の最中にそんな会話をしながら楽しむのも面白い。 ふたりはイくまで抱き合って互いの体をむさぼり合ったのだった。 ○  昨日の帰り道。 「お前、どうする?」 「何が?」 「明日の制服」 「うーん……。明日の朝になってみなくちゃ分かんないかな……」 「俺は予定通り夏服かな」 「ふーん」 「って、あんまり関心ない様子だな」 「だってクロはクロだし、俺は俺だし……」 「夏服の用意はしてあるんだろ?」 「そりゃしてはあるけど……。寒かったら嫌だもん」 「だな。だなだな」  制服が夏服に変更されるのは6月になってから。それから半月はどちらでも良くて、正式には6月後半から夏服と言うことになっている。 だからどちらを選択しても良かったし、そもそも制服なんて上着がなくなってシャツが長袖から半袖になる程度のものだと思った。  研磨の通っている学校の夏服は白シャツにグレーのズボン。グレーのズボンは夏も冬も色自体は変わらないが素材が変わる。だけど今の季節は本当にごちゃまぜで好きなほうを着てくる生徒ばかりだった。 クロとしては研磨と合わせたいと思っているようだが研磨としては本当にどうでも良くて、明日は起きた時の天気次第かなと思っていた。 ○ 「研磨。朝だよ、朝。朝、朝~!」 「うーん…………」 「天気は晴れ。夏服だな?」 「ぁ、うん…………。って、また勝手に入り込んで来てるしっ!」 「グッモーニン、研磨。朝食一緒に取ろうぜ」 「いいけど……」  それは別にいいのだが、朝から起こされたのが嫌だった。 「俺、目覚ましで目覚めたい……」 「何で起きてもいいじゃん。遅刻しなけりゃ大丈夫」 「そうだけど……」  なにかにつけて干渉してくるのがクロの癖、と言うか愛情だ。と研磨は思っている。 でも昨日の今日で夏服解禁になったからって、すぐに夏服にするのはどうかと思う。 ベッドに横になっていた体を引き起こされてゆっくりと頭が覚醒してくる。研磨はガバッとパジャマ代わりにしている大きめのTシャツを脱ぐと大声をあげた。 「って、駄目じゃん!」 「何がだ?」 「あーもぅーっ! 何、この体!」 「……」 「ちょっと!」 「いいじゃん。別に見えるわけじゃないんだし」  そっぽを向きながら軽い口調で言われたが、研磨は自分の体をマジマジ見つめて落胆していた。 確かに昨日は戯れた。でもこんなに赤く跡が残るほどの行為はした覚えがないのに、どうして……と言う感じだ。 「今日は夏服着ないっ!」 「どうして?」 「見えたら嫌だからっ」 「だから見えないって」 「でも嫌っ」 「……そんなこと言わないで」 「嫌。どうしてもって言うんなら」 「言うんなら?」 「休むっ!」 「ぇ……。そんなに?」 「当たり前だろ? 学校行ったら部活にも行くじゃん。そしたら着替えるじゃん」 「それは、そうだけど……」 「だったら駄目って分かるよね?」 「ぅ、うん……」 「だいたい何でこんなになってるんだよっ!」 「ごめん。お前が寝てる間にチュウした」 「さいあくっ!」 「……」 「休みでもないのにこんなの付けたらマズいって分かるよね、普通」 「……」 「俺、そんなにお預け食らわせたつもりもないけど?」 「ごめん。ちょっと感化された」 「何に?」 「映画?」 「映画? そんなのいつ観たっけ」 「正式には動画配信されてた映画か。あれで相手の気持ちを確かめるのに、いつもしないやり方使ってみようっての。試してみた」 「……。いったいどんな映画観てんだよ。タイトルは?」 「『カリスマ夫人の日常』、みたいな感じの題だった」 「それって、もしかしてアダルト?」 「いや、Rはかかっていない。ただの日常映画だよ」 「へぇ……」  怪しい匂いがプンプンしたが、いつまで疑っていてもしょがない。 とにかくこの強烈に付いてしまっているキスマークをどうにかしなければと考える。でもひたすら付いている場所が悪い。 「クロってさ、意図的にイジワルだよね?」 「それは違う」 「でも見えなそうで見える絶妙なところにつけてるよね。ここなんて特にそう。隠れそうでちょっとだけ隠れない。馬鹿にしてるの?」  自分の鎖骨をさすりながら確かめるために大きな鏡に向かって歩いて行く。  これはママの肌色クリームを塗って白粉で隠せばどうにかなるかもしれない。  そんなことを思いながらも、どんどん目線を下にして行くと、わき腹や下腹、脚の付け根など色んなところに赤いマークは付けられていたのだった。 「酷いよ!」 「ごめん。でも似合うよ」 「こういうのは、似合うとか何とか言うもんじゃない。消えるまでに何日かかると思ってるの!」 「明日には消えるだろ?」 「そんなに簡単には消えやしないよっ!」 「じゃあ、明後日くらいかな」 「すごくうまくっいてそのくらい。もううっ!」  言いながらも研磨の肌は白いので本当はもっとかかるんじゃないかと思っていた。だが、いつまでもそんな言い合いをしていても仕方ない。そろそろ学校に行かなくてはならない時間だ。 「クロ、部屋出ていって。俺は着替えるから」 「……」 「何?」 「着替えるの見てたいって言ったら」 「怒る。そんなの分かってるよね?」 「うん……」 「だったらさっさと出ていって」  未練タラタラのクロを部屋から追い出すとさっさと長袖の制服に着替える。晴れなきゃこれでも十分なのだが、襟元からのぞくマークを消すために母親の部屋に突っ走ってクリームを拝借するとお粉ではたいて整えて鏡で確かめる。 「どうにか良しかな。汗かいたらアウトだと困るんだけどな……」  言いながら指でそこを押さえて大丈夫と言い聞かせる。  言い合ってる間に食事の時間はなくなっていた。もう玄関で待っているクロと一緒に「いってきます」とドアを出ると後ろから思いっきりお尻をキックした。 「うわっ!」 「クロ、DEAD」 「ごめん。だけど俺は謝らないぞ!」 「謝ってるし」 「やった行為に対しては謝るが、衝動に駆られてしてしまったことへの過ちはないと思ってるっ!」 「自負するわけね」 「まあそうだ」 「救いようがないよ」 「これも愛故のなせる技だっ」 「自慢しちゃ駄目!」 「してないって」 「してもしなくても制裁はするっ」 「もうしたじゃん」 「もう一回しないと許さないっ」 「……じゃあどうぞ。俺の尻はそんなんじゃ堪えないから」 「そうするっ!」  バシッともう一発お見舞いしてやっとちょっとだけ満足する。だけどそれで体のマークが消えるわけじゃない。  暑くならないといいけど……。  空を仰ぎながら研磨はそんなことを考えたのだった。  クロ、DEAD! 終わり 20190723 タイトル クロ研「研磨の夏服」

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