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第5話 数年後

 あの日からキリトはアイラを連れて、広くて深い世界を旅するようになった。それでも、キリトはスノードームを作り続けている。 「今日はどこに行くんだ?」 「隣町のウルさんのとこ。息子さんがここ数か月外に出れなくて塞ぎこんでいるんだって」 「そうか…あんなに明るい子だったのにな」 「うん…僕と同じだよ。蝙蝠豚(バットピッグ)を追いかけて外に出たらドラゴンに食べられそうになったんだって」 「それで、今日はどうするつもりだ?」 「スノードームをいくつか持って行ってお菓子の話をするの」 「俺も行ったほうがいいか?」 「もちろん!キリトがいないとお菓子を再現できないからね!」 「お前もそろそろ魔法の特訓するか?」 「ううん、僕にはキリトがいるからいいの!」  10年ぶりにアイラが城の外に出てから数年経った。  アイラの恐怖症は段々と薄れていき、キリトが隣にいれば城の外に出ることも異世界へ旅することもできるようになっていった。  そんなアイラがの公園で思いついたこと。それは、自分と同じように外を怖がる人たちに外の世界を見せてあげることだった。  だからキリトはスノードームを作り続ける。アイラだけでなく誰もが世界を楽しめるようにと。  スノードームをかばんに詰めたアイラとキリトは、今日も外へと出かけていく。  魔法のスノードームを通して世界の広さと深さを伝える二人に多くの人が助けられていた。  この街で二人のことを知らない人はいなくなり、何か月も先に予約をしなくてはいけなくなるほど人気であった。 「よし、準備はいいか?」 「うん、じゃあ、ウルさんの家までしゅっぱーつ!」  フワフワと真っ白の雪が降る。吐き出される息が白い雲となり、凍てつく風がアイラの頬を赤く染めた。  例年通り頭上にはドラゴンが舞い、グルグルと影を生む。  それでも、アイラは怖さを感じなかった。  世界の美しさを知ってからアイラは勇敢になった。それもこれも、隣で守ってくれるキリトのおかげ。  ティータイムも異世界旅行もお互いがいるから楽しいのだ。  この先何年も何十年も二人は一緒に生きていくだろう。  スノードームを通して世界の美しさを伝えるために。 「ウルさーん!アイラとキリトでーす!ドーム持ってきましたよぉ!」 Fin.

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