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devil 11
「おーい、見えてるか?」
声をかけられて顔を上げると、リチャードが立っていた。戦の最中だったはずだ。その証拠に、確かに周囲では今も尚、両者の激しい争いが繰り広げられている。
しかしリチャードと自分がいる所だけ、周りから切り離されているように、空間が歪んで見えた。誰もこちらが見えていないようで、切りかかってくる者はいない。
「そうか、俺は死んだんだな」
言葉にすると、とても軽い話のように思えた。
リチャードは肩をすくめて、
「さあ、それはお前の判断に任せる」
「相変わらずだな、リチャードは」
軽い笑い声を立てると、リチャードも笑った。
「お前、ただの悪魔じゃないんだろう?」
不意打ちのようにしてそう尋ねると、リチャードはそれに答えず、逆に聞き返してきた。
「そんなことより、どうだった?夢でも現実でもない、奇妙な体験をした気分は」
「お前が仕組んだんだな、全部」
「俺って言うより、俺と神様的なひとだな。お前のような、将来的にとんでもない犯罪をしかねない悪人の卵を、罰するために。いや、罰するというよりは、正しい道に行かせるために教育をするんだ」
得意気にしているリチャードが、こちらへ近づいてきた。そして突然に抱き寄せて、囁きかけてくる。
「ここじゃなんだし、行こうぜ、俺たちの世界へ」
「そこなら存分にお楽しみが出来るってわけだな」
「おう、わかってるじゃねえか」
二人してくつくつと笑いながら、新境地へ思いを馳せた。
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