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(ファンレターをくださった✳✳✳さまへのお礼SS)
ムゲンアップ様(エクレア文庫)にファンレターをくださいました✳✳✳さま(仮名で失礼致します)へのお礼SSです。
✳✳✳さま
この度は、ありがとうございます。
ブログにお礼文載せております。
もし、まだ未読でしたら、お読みください。
りょう
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「レキ、トランプしよう。そうだな……ポーカーはどう? 負けたら相手の事を褒めるゲーム」
新しく開けた赤ワインは甘めで飲みやすい。
零士の目元が赤くなっている。これは酔っているサインだ。
「……なんだ、それ」
肩を抱いてくる腕を押し退ける。
「俺も褒められたい」
真剣な顔で迫られ、溜息をつく。
……大スターが何か言ってやがる。
「褒めてくれるファンが山程いるだろ」
半ば呆れながら言うと、零士が手を握ってきた。
「俺はレキに褒められたい! トランプしてくれるまで離さない」
いつになく強い口調。そう言ってぎゅっと抱きしめられた。
おまけにあちこちを撫で撫でされる。
「離せ、この酔っ払い!」
必死に抵抗するが、零士は引きそうにない。
「ね……一生のお願い」
首を傾げて甘えるように言われた。
「……安い『一生のお願い』だな」
「いーじゃん。明日の朝、フレンチトースト焼いてあげるから」
「……焦がすだろ」
「一番弱火でやるから! 10秒毎に焼色チェックするから」
おかしな説得につい笑ってしまう。
「そんなに頻繁に返してたら、いつまで経っても生焼けだ」
「キックパッドの動画見て、勉強する。タイマー使って、焼き時間もきっちり計るから。美味しく作ってあげる。なぁ、いいだろ?」
どんだけ必死に誘ってんだよ。
でもフレンチトーストか……
「仕方ねぇな」
満更でもない気持ちになって、それとなく言ってみる。
それに勝負って楽しいんだよな。ポーカーは運だから、負け続ける事はないだろ。
零士は酔っているくせに、トランプを鮮やかにシャッフルした。空中でカードを切り、手の平に次々と落ちていく。
「すげーな。マジシャンみたいだ」
思わず言ってしまうと、零士の顔が緩んだ。
「前にカジノのディーラ役をやって、猛特訓したんだ」
色んな役柄をやってんだな……
零士が五枚ずつカードを配り、それを捲った。
「ツーペア! 俺の勝ちだね。約束だよ。褒めて?」
零士が嬉しそうにカードを見せてきた。12 と5が二枚ずつ。
一回目はあっさり負け。
「……スタイルがいい」
「そうか、ジムに通った甲斐があったな」
だいぶ酔っているのだろう。へにゃっと眉毛を下げ、嬉しそうな笑顔を向けられた。
無言でカードを集めて渡す。
零士は鼻歌でも歌いそうな位、上機嫌な様子で、カードを混ぜた。
「次も俺の勝ち。絶好調!」
1 が三枚、7 が二枚。
二回目、俺はワンペアだったが、零士はフルハウス。悔しくて、ジロリと睨む。
「さぁ、いつでも褒めて?」
嬉しそうな零士を一瞥。
「背が高い」
「褒めるって事は、背の高い男が好き?」
目がくっつきそうな位、にこにこしている。
「早くカードを切れよ」
「えー。スルー?」
零士はニヤけながら楽しそうだ。
次こそは──
そう思っていたのに。
「ストレート」
12345、順に並べられたカードを見て、肩を落とす。
「なんだと⁉ ストレートなんて、揃うはずない。イカサマしてんじゃないのか?」
「まさか! 心外だな。真剣勝負にそんな事するわけないだろ。疑うなら、次からレキがカードを配ってもいいよ」
「……」
「とりあえず褒めて褒めて」
何、可愛い子ぶってんだ。
「まつ毛が長い」
「ふ、ハハッ。それって褒め言葉なの? レキも長いじゃん」
「うるせー。次!」
次こそは……
零士からカードを奪い、慎重に混ぜる。これでもかという位切ってから、五枚ずつ配った。
「ロイヤルストレートフラッシュ!」
「マジか!」
俺が切ったから、流石にズルはできなかっただろう。
あまりの強運に驚きを通り越して、呆れてしまう。
ピピピ……
その時、零士のスマホが鳴った。
「残念。楽しかったけど、時間だ。バラエティをチェックしたいんだ。これが最後だね。できれば見た目とかじゃなくて、内面についてがいい。最後だし、盛大に褒めて。最上級のやつで」
真剣な表情で見られ、開いた口が塞がらない。
また無理難題言いやがって……
しかも勝ち逃げかよ。
でも俺がカードを混ぜたしな……
「仕事してる時は……格好良いと思う」
俺の言葉を聞いて、零士の頬がさらに赤くなる。
「……俺、格好良い?」
少し信じられないという表情。でも、そわそわウキウキが隠せていない。
「仕事してる時はな」
「そっかぁ……じゃあ、恥ずかしいけど、後で新しいCM見てくれる? バイクのCMなんだけど、『格好良い』って色んな人に褒められたんだ」
満面の笑顔。照れながら言われて失敗したな、と思う。
喜ばせて、どうする。
「ふふ……ありがとう。レキも可愛……格好良いよ!」
嬉しそうに言われて、溜息をつく。
「……今、『可愛い』って言おうとしただろ」
「言ってない言ってない」
何、緩んだ顔してんだ……
それ以上突っ込めず、リモコンを取りに行った。
「バラエティ見終わったら覚悟してね?」
「は?」
「今日は寝かせてあげられないかも……」
悩ましげに見られ、慌てて距離を取る。
「な、何言って……」
「その気にさせといて、逃げるなよ?」
やたらキラキラオーラが眩しい。さり気なく後退る。
「知るか! 俺はもう寝る!」
トランプを集め、ケースにしまった。
「眠姦か……ちょっとドキドキする」
ポッと零士の頬が赤くなった。
発せられた言葉にギョッとし、軽蔑の意を込めて睨む。
「おい! 無意識の人間を襲うつもりか!」
「寝てる間に好き勝手やるの、楽しそう」
「怖いっつーの!」
ドン引きしているのに、零士はケラケラ笑っていた。
取り合うだけ無駄だと思い、グラスを片付けようとしたら、手首を掴まれた。
思い切り引っ張られ、零士に抱き着く形になってしまう。
「……嘘だよ。優しくするから、寝ないで待ってて」
耳元で囁かれたら、頬が熱くなる。
黙っていたら、そっと抱きしめられた。
「また、そんな可愛い顔をして。俺、仕事なの。誘惑しないで?」
「してない!」
全く、この男は……
「じゃあ、キスだけ」
「しない」
そう言ってるのに、零士は首にキスしてきた。
「噛んでいい?」
「だ、駄目に決まってんだろ! おいっ! 何、ボタン外してるんだ。バラエティ、チェックすんだろ⁉」
「リアルタイムで見たかったんだけど……録画で我慢する。レキ、今日はスローセックスで泣かせてもいい?」
サラッと恐ろしい事を宣言すると、零士は俺をソファに押し倒した。
「や、やめ……っァ……」
✳✳
トランプに付き合ってやったのに、その日は最悪だった。
「気持ち良くて……変になりそう……」
目元を赤く染め、掠れた声で囁かれる。
「も、ヤダッ……いい加減にしろっ! ……ッ。ぅ、アッ!」
「……ね、もっと足開いて」
「や、ヤッ……」
「可愛い……」
やたら優しく焦らされまくり、やっと挿れたかと思ったら、もどかしくなる位、ゆっくり責められ、おまけに寸止めプレイ。
文字通り泣きそうになる程、甘く迫られ、今後、酒を飲ませるのはやめようと心に誓ったのだった。
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