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第1話
今日はあちらこちらで、卒業式が行われていた。
春うらら、桜の咲く暖かな季節。出会いがあれば別れもある。
これからの新しい生活に心時めかすもの。
これからの新しい生活に不安なもの。
さまざまな期待や不安を胸に抱きながら、ようやく長い長い式が終わった。
門の前で憧れていた先輩が数人の女子に取り囲まれ、明るく笑顔を振りまきながら出てきた。
女子たちは僕を遠巻きに見ていたが、先輩が
「ちょっとごめんね。」
っと人払いをしてくれた。
「僕に何か用事?」
にこにこと屈託のない笑顔で話しかけてくる。ささやかな気配りの出来る、優しい先輩だから・・・、僕は好きになったんだ・・・。
「せっ、先輩・・・。あっ、あの・・・。良かったら、先輩の第二ボタン下さいっ!!」
「良いけど・・・、僕男だよ?」
「良いんです、あの・・・、僕、ずっと先輩に憧れてて先輩みたいになれたらなってずっと思ってて、何かお守りみたいなのが欲しくて・・・、やっぱり、ダメですか?」
「ううん、こんなので良ければ良いよ。君に上げる。ちょっと待っててね。」
先輩はミニ裁縫道具をポケットがら取りだすと、ハサミでチョキンと糸を切って、ボタンを僕に手渡してくれた。
「それじゃ、頑張ってね。」
そういいながら手を振り去った先輩。思いは伝える事は出来なかったけど、僕の心はポカポカと温かかった。
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