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第1話

男同士のクリスマス                香月 琉夜  十二月二十四日。クリスマスイブ。  俺、誠は男友達と二人で、遊びに出かける事になった。去年のクリスマスイブだった。突然、友人の有希から電話があった。 「おい、誠。僕また振られちゃった‼ 愚痴聞いて」 「なんだまた振られたのか。原因はなんだ」 「僕、男の癖に嫉妬深いんだって。重いって言われちった。クリスマスに一人なんて嫌だよ」 「じゃあ……俺と付き合えば?」 「うん、良いよ。遊ぼう」  俺の勇気を振り絞った告白のつもりだったが、あっさり勘違いされ流されてしまった。  普通の友人として付き合うと、勘違いしているらしい。まぁ、俺はゲイである事を隠しているし、有希は根っからの女好きだ。   この気持ちに気づくはずもない。 あれから一年が経った。毎日お互いの家を行き来したり、ゲームセンターに行ったり、買い物したりした。普通の友達付き合いとして。それでも俺は幸せだった。密かにデート気分を味わっていた。  すると突然、有希が「池袋行こう」と切り出した。 「なんで⁈ あそこすっごく混むじゃん。嫌だよ、俺。家でのんびりゲームしたい」 「お勧めのアクセサリー屋があるんだ。お前にプレゼントしたいし、付き合えって」 有希は手馴れた様子で品物を物色し、店員を呼び、いくつか手に取りそれをレジに持って行った。 「はい、ラッピングしますか?」 「いや、付けて帰るんで、そこのペンダント用のチェーンも一つ下さい」 「ご利用ありがとうございます。また来て下さいね」 「笑顔だったな……あの店員。ここ、前の彼女と来てたのか?」 「うん、まぁね。ここは良く俺がアクセ買う場所。指出して」 「なんで?」  恐る恐る手を差し出す。 「そっちじゃない、左」 すると、しゃがみ込み膝をついて、左手の薬指に指輪をはめたものだから、俺たちの周囲にいる買い物客がざわついた。みなその男子二人を奇妙な面持ちで観察していた。恥ずかしいったらない。というか、なんで俺の指輪のサイズ知っているんだ。こいつがなんで毎年振られるか今、分かった気がした。 「これ、クリスマスプレゼントな。付き合った記念一年目の」 「お前はどうすんの? もう一個指輪、買っていたみたいだけど」 「俺はペンダントにするの。そうすればたった一つのペンダントが出来て、かっこいいだろ?」  深い意味は無いんだな。と言うか、こいつは男友達に、指輪プレゼントするのか。しかも左手の薬指に。  聞けば、毎年こうやった後に必ず振られていたと言う。そりゃそうだろう。  うん、多分。意味、知らないんだな。馬鹿だと思っていたが、ここまでとはな。 お気に入りの子には必ず、指輪を渡していたと言う。 「そりゃ、振られるわ。お前……」 「えっ、なんで? 俺、なんかした? これからも宜しくな、誠」  ああ、こんなおバカな所も好きとか、いとおしいとか思ってしまう俺もかなり来てるなー。暫くはお気に入りの友人ポジション楽しむか。こうして俺たちのクリスマスは、ショッピングモールの一角。その雑踏の中に溶け込んでいった。  (終)

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