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悪魔「チャンスを逃すには勿体ない」天使「おい」

   【ヘタレ美形攻め×不思議ちゃん系平凡(※天然やおバカではない)】  こんなにも勇ましい壁ドンは、あっただろうか。 「どうやらアナルセックスというものが気持ちいいらしい」 「……どういう経緯でそうなったんだ」 「女子共がそう騒いでいやがる」 「そうか……」  俺の幼馴染みは普通だ。あ、これは顔が普通というだけで中身は――凄まじく興味あるものに食いつく。  例えばプリンに醤油の組み合わせはウニ味になる。不良は捨て猫犬に優しい。ミラーリングで相手の親近感を持たす。  などなど、食べ物から人の心まで。本人が聞いて本当かどうなのか。そして面白いのかそうじゃないのかで判断。  見事、本人の興味に当たればすぐ実践してくるのだが、今回ほどヒヤヒヤするものはない。  なんだ、アナルセックスって。いや知ってるけども。俺そういう動画も見ちゃってるけども!――だって何度コイツをオカズにしたことか……。  生まれた時からずっと一緒で家族ぐるみで仲が良い俺達は喧嘩も全然したことあるけど、なかなか離れないでいる。  つーか、俺が離れさせないようにしている……と言えばいいか。  好きだしなー。でもコイツは女が好きで、過去に一人。彼女という存在も作ったことがある。もちろん俺が阻止したし――別れさせたし――なんの展開も作らず終わったから、彼女といえるのか危ういが。  いいんだが悪いんだか、俺はコイツと違って顔が良く結構いろいろ効くから楽だ。しかしコイツからしたら俺の顔なんて見慣れてるせいか、ただの友達止まり。  それでいいんだけど、先に行動出来ないヘタレな俺は最大限の力を使ってこの関係を維持しているわけだ。  他は出来るのに、コイツ絡みになると途端に動かなくなる体と口。役立たずにもほどがある。だからこそ、幼馴染みの関係で、なにかあれば頼って来てくれるように体勢を整えてる。  この行動力をコイツに使えって話だが、これが俺の性格だから無理だ。  告白も。 「巷で流行ってるらしい。び、びーけー?びー……あー、あ!びーえる!そうだ、BLっつーのが!」 「割と昔から流行ってる気がするけどな」 「俺からしたら最近だ。で、そのBLの略、知ってるか?」 「知ってるけど」 「そう!ぼーいずらぶ!男同士でもセックス出来るらしいぞ。すごくねー?どこでヤんのかなー」 「……」  その興味に突っ走るとあまり話を聞かないから心配だ。  もう完全にアナルセックスしか頭にないよなー……コイツ、なんだろう。 「世の中にはいろいろあるってことだな。よし、帰るぞ」 「いや、俺は行く」 「……どこに?」 「二丁目に!」 「はあぁぁぁぁぁ……」  こりゃ頭抱える案件だな。  どうしてそうなる。コイツのなかでは〝アナルセックスが気持ちいい〟となっているから、まさかケツを捧げに行くんじゃ……マジかよ。  勘弁してほしい。なんで俺に聞いてくるくせに、俺を頼って来るくせにこういう時は「相手になれ」とか言ってこないんだよ!  ……あ、まあ、ちょっとそういう面では俺も人の事言えないから強く言い出せないんだが。  でもそんなの許すはずないだろう。  どうにかして止めないといけない。俺の使命だ。 「明日は土曜日だ。俺は行くぜ。年上のが良いと思ってるんだが、どうよ」 「どうよ、じゃない。今日の課題の多さにお前死んでただろ。家帰って片付けるぞ」 「課題はその後だ。今はアナルセックス」 「大きな声でそう言うなって……あー、もう!怪我するからやめとけってば」 「怪我だぁ?女子達は「太郎君の顔が気持ちよさそう」だとか「花子君頑張ってる、めっちゃイってる」って話してたぞ。めっちゃイくんだぞ?気持ちいいだろ、それ」  な、なんて下品な女子達だ……今度調べて抑えるよう言っておこう。 「それについて、どこでヤんのかなって言ってたが、ケツだぞ?ケツの穴を使うんだよ」 「……なに?」 「ケツとチンコ。穴と棒。もうわかっただろ?はい終了。帰るぞ」 「……」  二丁目に行く気満々なコイツの腕を掴んで、家に向かう。  暴れるかと思って強めに掴んでいたが、案外そうしなくても良さげで大人しい。――おかしい。自分がわかるまでやり通すコイツが、大人しいなんておかし過ぎる。  なにに納得したんだ?  今ので納得したのか?  だとしたらこれからは論破して行動を阻止すれば楽じゃないか?  今までにない展開に少しドキドキする俺だが、もうBLの話はこれで終わればいいなと思っている。  そもそもBLはファンタジーだと聞いたことがある。安易に立ち入るものではない。実際、男同士じゃなくてもアナルセックスなんてものは存在するが、本当に特殊なプレイだと思うから――コイツにはそんな事させたくない……って、俺もそんなに強く言えない立場だったな。  妄想とはいえ、コイツのケツを何度犯しているか……さっきもそうだが、下品過ぎた。  明日は課題やる前にコイツが好きなケーキを買って行こう。そうすりゃ完全に忘れてくれるだろう。それでも忘れてなくて暴れたら動画見せれば終わるだろう。  AVだと慣れてる映像だろうから、ちょっと過激に乱暴な動画で……あー、今夜の俺は大変だな。  安心安全な動画サイトでも巡るか。 「よし、ついた。ご飯食っていくだろ?着替えてきたらいい」 「いや、お前今日は俺の家に来い」 「え」  計画を練っていた頭はスッキリしていた。だっていろんな阻止方法が思い浮かんだから。  一つじゃだめだ。最低でも五つぐらい用意しないとコイツは納得しないから。まあだから今の帰り道が大人しいのが怖かったんだが。  怖いのは、今なのかもしれない。  俺の家とコイツの家は隣同士。玄関から出て十秒もしないうちに着く。  コイツの両親は共働きだから、よく夕飯は俺の家で食べる。風呂入ったらうちに来る流れが、今日はなんだか違う。  なんというか、やっぱりコイツのなかの興味がおさまっていなかった事がわかる。 「お前はアナルセックスをしたことがあるのか?」 「いや、ねーけど……まだ続くのか」 「もう家だから声とか気にしなくてもいいだろう?」  そういうわけじゃないんだけど。 「で、ヤったこともないのになんで知ってんだ?ケツ使うとか」 「や、それはアレだ。想像」 「気持ちいいかどうかもわからないと?」 「実際は気持ち良くないだろうよ。女子達が話していたのは漫画の世界だ。次元が違う。俺達でヤったら避けるに決まってる」 「――それだ!」 「……っ!?」  な、なんなんだ……驚いた。さすがに今の反応は驚いた。  なにを閃いたのかコイツは俺の胸ぐらを掴んで目を輝かせていた。  今の流れでなにが『それだ』に繋がったんだ……アナルセックスでどう、思ったんだ? 「よくよく考えりゃケツとチンコだもんな」 「おい、お口」 「お前も言ってんじゃん。知らない野郎のチンコなんて見たくねぇしな。その分、お前のチンコなんて見慣れてるから全く怖くない!風呂で見た感じ汚さもないし、イケるな!」 「ちょちょちょっ、な――はあ!?」 「んまぁ、ちょっとデカいが……お前知ってそうだし、出来るだろ」 「待て待て!お前な!」  ベルトを外して俺の下半身を覗き込むように喋るコイツ。  早速ヤろうとしてくる体勢に思わず、こう言ってしまった。 「こういうのはまず!シャワー浴びんだよ!」 「それもそうだな!」 「あ、いや、じゃなくて、」 「やっぱこういうのってお前よく知ってんだなー」 「そうじゃなくて……」  あー。もう泣きそう。震える。  俺この後デキちゃうの?  アイツとセックス出来ちゃうの?  嬉しいのかなんなのかわからない複雑な気持ちは多分――いや、絶対に順番が間違ってるからだ。  気持ちを伝えた方がいいのに、なにも言わず言えずなままセックスなんてしちゃってもいいのかわからないから複雑なんだ。  バクバクする心臓に震える体がおさまらなくなってきた。なんなら俺のモノもすごいことになってる。立ったらバレるレベルで勃起してる。  というかこの家にローションやゴムがあるのだろうか?――いやいやいや、ちゃんと説明して今このタイミングで俺の気持ちを伝えるべきじゃないのか?――違う、このチャンスは逃しちゃいけないからヤるだけヤって体から取っちゃってもいいんじゃないか?――バカバカバカ!あとあと悲しむであろうアイツの気持ちも考えろって――  天使と悪魔がいる。俺の中で天使と悪魔が戦争している。  いつだか、アイツがソーセージはチンコに似てて噛みきれないから食べれないと言っていた。それをバカにするほど余裕なかった俺も俺で、アイツの前ではソーセージを食べるのをやめていた。  やっぱり、チャンスは逃せないんじゃないか――? 「おい、はやくお前も入れ。こっちは楽しみで仕方がないんだよ」 「……お前、いつから――」  アイツが手に掴んでいたもの。それはバスタオルにローション、あとは俺のモノのサイズに合うゴムだった。 「不思議ちゃん偽る平凡野郎とか、痛くてしょうがねぇだろ」  END  

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