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※第30話

 オメガはヒート中であっても、そのサイクルには波があり、最高潮から徐々に収まり、また突然のように高まっていくような波がある。何度も繰り返される波の上昇の中では、ひたすら体が刺激を求め続ける。思考すらも支配されて、まともな常識など考える余地なんかなくなる。オメガが非難されるのは薬が切れたら、どこでもそういう状態になるからだ。  統久には、それを一時的に止めるその抑制剤が効かず、ヒート期間は一歩たりとも外に出られない。部屋の中で機械の動きに腰を揺さぶり、生ぬるい快感に獣のように声をあげ続けるだけだ。  それでも仕事も身分も保証されているだけ、俺は恵まれている。必要なものは支給されるし、なにも不自由なく生活していける分幸せだ。中には不快な態度や差別されたりもするが、気にはしないし、気にしてる余裕なんてない。  汗が顎先まで伝わりシーツは既にぐっしょりとしていて、濡れていないのは枕元だけだ。  こんなに酷く体が求めてしまうのは、近くにアユミが居るせいだ。  身体が、心が、全てもっていかれるようにアユミを求めてやまない。彼に抱かれたいと全身で願ってしまう。  統久は、頭を左右に振って、顎先をぐっと突き出し奥歯を噛み砕くように強く噛み締める。  それだけは……ゆる、さない。  それだけは……絶対に、ゆるさない。  遠くで扉の開く音がしたような気がして、甘ったるい匂いが、空気に混ざりだし体が更にじんじんと熱をもつのに、統久は目を見開く。  漂うにおいに意識がバラバラに飛んでいきそうな快感に、脳内が弾けてしまい理性を奪われる。脚を拡げ奥までほしくて腰を機械に擦り付けて背中を反らせる。 「ッ……ァア……ッいい……ああ、なかぁ、……ううう」  驚いたように目を見開いたまま、統久の晒された痴態を眺めるバディになったばかりの部下の姿を視界に見つけて、彼は誘うような表情で嫣然と笑みを零す。  普段の彼では絶対にしないような、艶を含んだ欲望に満ちた濡れた眼を向けられ、桑嶋は怯んだ。  統久には既に羞恥心はかけらもなく、その男が欲しいと本能の叫びのまま、腕を伸ばしてその腰を掴んで、グチャグチャに濡れた下半身をねだるように押し付ける。 「う……ッあう……っなァ、あ、だいて……ッ、ほ、ほしい……ッく……ッね、あ、あ、……おねが、い」 「をい!?アンタ、だいじょうぶか……よ?」  表情に嫌悪感はなく心配そうに顔を覗かれるが、彼もヒートに当てられたのか、額は汗ばんで呼吸が荒くなっている。  濃い甘い香りが爆発したように空気にまざりこみ、ねだるような表情のまま、統久はもどかしそうに桑嶋のズボンのベルトを引き抜く。 「ちょ、っと、まて、忘れもん取りにきただけだ、うわ、待て、待てって」  ヒート中のオメガに待てなんて芸当はできない。取り押さえるように桑嶋は統久の腕をまとめて掴みあげるが、統久は歯でジッパーをひっかけてソレを引き下ろす。  涎まみれの唇で引っぱり出したペニスを含んでしゃぶりつき、獣の本能のみになっている様を眺めて、桑嶋はそっとその黒髪を撫でる。 「……理性トんでるんだ。アンタ、かわいいな」  理性を失いながらこの部屋で一人きりで耐え続けてるだなんて、健気すぎるだろ。アンタの柄じゃないんじゃないか。……だけど。  統久は頭を撫でられて、喉の奥までペニスを飲み込んで鼻を鳴らし、誘うように脚を開いて胎内にある張形を見せつけるようにずぶずぶと抜き差しする。 「……んッ……ッんう……ふ、くんん……ンンン」  普段は有能で自信に溢れていて、誰よりも理知的な男が情けないくらいに腰を捩りながら快楽に獣のようになっている姿は興奮する。 「アンタは、可哀想なくらいにヤらしくて、たまらないな」  ズルッと喉から硬く猛った刀身を引き抜いて、統久のアナルからずるりと張形を引き抜く。 「や、や……ッあ、あ、ッやあ、なか……ッほし、い、ヤ、だ」  引き抜かれた内部が切なくて熱がじくじくと痛む位に腫れてたまらないのか、脚を開いて桑嶋の太股に腰を押し付けてくる。いつもはきりっとしている眉もすっかりハの字にさがってしまっていて、涙に濡れた双眸が誘うように光っている。 「うわ、すげえやらしい。今なら、すげえエロい言葉でオネダリとかしてくれそうだな。鹿狩副局長、ちゃんと言ってくださいよ。何がほしいの?」  わざわ役職を告げて羞恥心を煽るが、そんなもの既に彼の中にはないのか、脚を拡げて腰をあげて求めるように左右にくねらせる。 「ッ……くッ……ああ、なかに、ああッ、ほし……っい、なか……おちんちんっ……い、れ、てッ……ああ……ほしい」 「もっといやらしく卑猥なこと言ってムードだして誘ってくださいよ。言えるでしょ。どこになにがほしいの?副局長」  押さえつけられた腕を解放され、脚を極限まで開いて指で中を開いて晒し見せ付ける。 「……ッい……あ、ふ……っう、ンッく、おく、におちんちんッ、ほし……っい、なかでたねつけ……して、ね、なか、いっぱいだして……はらま、せて」  淫らな表情で完全に発情しきった表情でねだられ、桑嶋はその腰を抱え上げて、屹立した肉茎を一気にその肉洞へと押し込みぎゅうっと抱きしめる。 「……アンタみたいな人も、こんなに狂ってしまうくらいの発情って、本当に辛いんだろうな……なあ、オレのちんちん、そんなにキモチいいかよ」  腰を密着するまでその腹筋へとと押し付け、ずぷずぷと濡れた音を響かせ、身体の中心を奥深く埋めていく。 「ッう、アァ……っく、うう、う、ちんち、ん、きもち、いい、きもち、いい、ああッ、うう、いい……ああ……ああ、ああいい、ちんち、ん、きも、ちい、いいッぁあ」  甘ったるい声をあげて、卑猥な言葉を紡ぎながら、びしゃびしゃと愛液のように精を滴らせる様に、桑嶋はまるでこの男を支配しているような感覚に囚われる。 「アンタが無様すぎて……たまらないくらい、可愛い」  身体も心も、すべて守りたくなるような可憐さとかまったく持たないというのに、何故かそんな可憐な輩よりも、この図太いくらいの男の方が脆そうで、悲しくなるくらい可哀相で、そして可愛いと桑嶋には思えた。  酔狂ってわけじゃない、いや、この甘いにおいに酔って狂っているというのならばそうかもしれない。  何度も胎内の奥へと突き上げ、その堅い身体を揺さぶっては、内部に注いだ。避妊なんて考えずに、最奥まで満タンになるまで、桑嶋は統久を抱き続けた。  

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