8 / 8

第8話

「まさかレンタカーを借りるなんて!言ってくれたら車出したのに・・!」 助手席に乗った店長は外を見ながら呟く。 「オレが思いつきで誘ったんです。出してもらうのも悪いし」 借りた車は店長の車と同じ2シーターだ。 他の車は貸出中でこれしかなかったけれど、まあいいか。 転勤先の店ではうまくやっているらしい。 幸い同い年のマネージャーが補佐してくれているらしくうちの店にいた頃よりも暇だという。 「じゃあ、寂しくはないんですね」 うっかり口に出してしまった言葉に店長は笑う。 「心配してくれていたの?ありがとう」 でも君たちのようにキラキラしている子たちはなかなかいなくてさあ、と また青臭いセリフを吐く。 漫画の読み過ぎっすよ、と俺も笑う。 「えっ、岡崎さんと山崎くんて付き合ってないの?あんなに仲良しなのに」 「よく分かんないっすよねえ・・」 岡崎の教えてくれた、美味しいうどん屋はすぐそこだ。 うどん屋かよ!とツッコミを入れたのは山崎で、俺ならパン屋を 教えてやる!をわめいていたのを思い出す。 ドライブなんて腹が減るものよ!と岡崎が一蹴していた。 そう言えば腹が減ったなあ、と思いながら店長と笑う。 きっとパンじゃ足らなかった。 深緑が眩しい森の中を、男ふたりが乗った2シーターの車が走る。 男同士でとか、もうどうでもいいや いろんな話をしながら過ごすこの時間を店長は気に入ってくれる だろうか。 そんなことが頭をよぎって消えて行く。 「そういえば店長、前聞けなかったんすけど・・何でドライブするのに オレだったんですか?あ、2シーターだからか」 みんなとワイワイしたかったなら、他の車で一緒に行っても・・と 言った俺に店長が答える。 「何でって、相澤くんが好きだからに決まってるでしょ」 「ふーん・・・え・・?」 爆弾発言をさらりと落として、店長はいたずらを仕掛けた子供のように笑っていた。 「じゃないと2シーターの車で誘わないでしょ、ふつー」 居酒屋で出会った女子二人が、遠くで大騒ぎしているのが聞こえたような気がした。

ともだちにシェアしよう!