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人斬り心中

 なんの因果か、俺は親を斬り殺した相手と暮らしている。 「てめぇは俺が憎くはねぇんか? ん?」 「なんも、ねぇよ……う、ぐっ!」  俺の苦手な丁子油(ちょうじあぶら)の臭いを纏ったオッサンの指が、俺の釜にねじ込まれる。 「可愛くねぇやつ。ほら、てめぇの好きなマラだ」 「ぐッ、あ、んああっ!」  丁子油で滑りがよくなった釜に、オッサンのマラがするりと入った。  殺してやる、殺してやる、殺してやる。  何度もそう思いながら、俺は親の仇のオッサンに抱かれる。  はじめは俺がガキで、まだ男でも女でもないような見た目だから抱いてるのかと思ったが、からだがでかくなった今ですらオッサンはこうやって俺を抱いている。  しかし、からだってやつは、簡単に慣れちまうもんで。  どんなに心で拒絶しても、からだは受け入れちまうんだ。  何度もからだを揺さぶられ、布団に擦れる俺のマラから種汁が飛んだ。  それでオッサンのマラを締め付けたのか、どぷりとオッサンが種汁を出した。  熱くなった釜に注がれるオッサンの種汁は気持ちいい。 「てめぇの釜は、本当に女のぼぼみてぇだな」  オッサンが俺の釜からマラを引き抜く。 「見ろ、鼈甲(べっこう)の張形だ。俺が戻るまでこれ入れてな」  そんなものどこに置いていたのか。鼈甲の張形なんて上等なものを取り出した。  鼈甲のそれに丁子油をぬりたくり、俺の釜に挿し入れると、オッサンは身支度を始めた。  オッサンは人斬りに行くんだ。俺の親を斬ったみたいに、また誰かを斬るんだ。  オッサンは人斬りの後、必ず俺とまぐあいたがる。それも帰ってすぐに、だ。 「オッサン、もうすぐ節分だぜ? 俺なんかとまぐあわねぇで、種もらいの祭りにでも行けよ」  種もらいの祭りはまぐあい祭りだ。男と女が誰とでも好きにまぐあう。それにでも、行けばいいんだ。 「てめぇ勝手なこと、ぬかしてんじゃねぇよ」  オッサンは俺のひとつに結わえている髪を引っ掴んで静かにそう言った。  引き上げたところから髪を掴んだ手を離す。俺の頭は布団に落ちた。 「……行ってくる」 「はぁーい」  布団の上とはいえ、打ち付けた頭が痛い。が、それよりもオッサンとまぐあったあとは、からだが昂ってしかたがない。  釜の中の鼈甲の張形を自分で動かし、また、種汁を飛ばした。張形はオッサンのマラと違って、惨めな気持ちになる。  それからしばらくの間、大人しく過ごしていたが、オッサンは帰ってこない。外は暗くなっていた。  オッサンの仕事はいつも早い。そんなオッサンがなかなか帰ってこない。  俺は張形はそのままに、褌を締めて長屋の外へ出る。 「……オッサン」  ガラリと戸を開けたら、そこにはオッサンがいた。 「あ、どうした。てめぇ」  オッサンは帰ってきた。血だらけだった。 「なんもねぇよ」 「てめぇ、張形、抜いてねぇだろうな」 「そのまんまだ。なんだよ。血だらけで、まぐあうつもりかよ」 「とっととさせろ」  荒々しく、俺の着物と褌を脱がせ、鼈甲の張形を引き抜いた。  オッサンは自分のマラに丁子油をぬりつけている。  オッサンに促され馬乗りになり、俺の釜にマラを入れる。深く入るオッサンのマラが気持ちいい。  じわじわと、オッサンの血が布団に染みて広がっていく。 「オッサ、んんっ、死ぬよ……あっああっ!」  オッサンは何も言わない。  俺の種汁がオッサンの腹に飛ぶ。俺は果てたがオッサンのマラはまだ硬い。  オッサンの息が荒い。腰に添えられたオッサンの手には力が入ってなかった。  俺はオッサンを釜に納めたまま、手を布団の外へやる。あった。オッサンのいつも使ってる刀だ。それを掴む。 「て、めぇ……なに、して、やがる」 「オッサン、たのむよ。まだ死ぬなよ」  刀を鞘から抜き、俺はオッサンの胸を突いた。 「さよなら、ごきげんよう、オッサン」 「て、め……あ」 「大丈夫、俺もすぐいくから」 「あ、あ、あんがとよ」 ぐったりと倒れたオッサンの頭を掴んでからだを動かし、背中からもう一度刀を突き刺す。 俺は釜にオッサンのマラを入れたまま。オッサンから突き出た刀の切っ先めがけて倒れ込んだ。  ずず、とからだが落ちていく。ちょうど、俺の顔が、オッサンの顔にぶつかるところで止まった。  はじめての口吸いだった。 「俺以外に、斬らせる、かよ。なぁ、オッサ……ん」  俺は、オッサンを強く抱きしめた。   ◆ 了 ◆ 作中に出てくる昔の言葉の解説 ※釜:肛門 ※マラ:男性器 ※ぼぼ:女性器

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