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想い_肆
まさか足腰が立たなくなるなんて思わなかった。
受け入れる側の痛手がこんなにも半端ないものだなんて。
「おめぇ、顔色が悪ぃけど、でぇ丈夫かよ」
顔が真っ青だぜと、正吉が平八郎の腰を優しく擦る。
「気だるいし、腰が痛む」
声をあげすぎて喉がかれるし、尻の奥の方に鈍い痛みと今だ正吉のマラが中にあるような感覚が残る。
「まぁ、それに関してはおめぇも同罪だ」
確かに何度か欲しいと強請った。だが、その度に遠慮なく攻め続けたのは正吉だ。
「まぁ、楽になるまで寝てろよ。な?」
「うう……、そうする」
帰りにまた寄るよと言い残して正吉は診療所へと行ってしまった。
急に寂しくなり、正吉の残り香を探す様に布団に鼻をつければ、部屋の襖が開かれる。
「平八郎」
心配そうに顔を覗かせる紗弥と、にやにやとした表情を浮かべる晋の姿があり。
平八郎はあわてて起きあがれば、腰に鈍い痛みを感じて前かがみとなる。
「無理に起きなくて良いのですよ。正吉が痛みが引くまで寝かせておいてくれと言っていましたし」
「随分と激しかったのだなぁ。いやぁ、お主もやっと男になったな」
からかう様にそう言われ、平八郎は唇を尖らせると、紗弥がこれと晋をたしなめる。
「やっと二人が結ばれたのですよ」
お祝いしないといけませんねと微笑む紗弥に、平八郎はまるで金魚の様に口をパクパクとさせる。
「ぶはっ、平八郎、お主が昔から正吉を好きなことなんざバレバレよ」
と額を弾かれた。
「なっ、なっ!!」
「まぁ、俺はお前が好きだったから、気が付かないふりをしていたけどな」
「まさか、輝定兄上も知って……」
「当たり前だ」
皆が気が付いていることを当の本人だけが気が付いていなかった。
穴があったら入りたい。羞恥に顔を赤く染めて布団の中へと潜り込む平八郎に、晋と紗弥が掛布団を捲りあげる。
「平八郎、からかい過ぎましたね。私わね、貴方が自分の気持ちに気づいて正吉と結ばたことがすごく嬉しいの。幸せにおなりなさい」
両手をとり握りしめる紗弥は、自分の様になってはいけないと言っているかのような表情を見せる。
「姉上……」
「さ、朝餉を用意しましょうね」
それまで寝ていなさいと晋を連れて部屋を出て行った。
<了>
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