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エロい目線と甘いやり取り
「伊月先輩の手って小さいけど、ゴツくて好きっすよ」
1時間でお互い半分くらいまとめ終わったためにもぐもぐタイムをし、また作業再開したばかりの時に悠貴は伊月先輩を見ないで言い出す。
伊月先輩が一口サイズのチョコを悠貴にアーンした後、指に付いたチョコをチュッチュッと音を立てて舐めていた……その親指と人差し指が小さいのに、小石のように硬く膨らんだ関節のコブと甲に浮き出た血管が悠貴の印象に残ったらしい。
「舌は熟れた苺みたいな赤さが色っぽいし、俺がチョコだったらイチコロっすね」
悠貴のおやつだったカラフルな粒チョコを大きく口を開けて待っている伊月先輩に1粒ずつを3回放り込んだ時の舌……そして上目遣いに自然となった大きな瞳の輝きに悠貴はまた少しドキッとしたようだ。
「なに急に……オレを落とそうとしてんの?」
嘲笑うように言う伊月先輩に、いえと軽く返す悠貴。
「いつものことっすけど、エロい目線で見たらすごいことしてるなって」
「エロい目で見んなや」
突っ込まれた悠貴が豪快に笑うと、突っ込んだ伊月先輩もつられて大笑いをした。
「そういやぁ、待たせてる恋人は大丈夫なの?」
「あっ、忘れてたっす」
「ダメでしょ……今確認していいから、連絡したげて?」
伊月先輩の厚意を受けて、悠貴は黒いカバンからスマホを取り出す。
『7704』とタップしてロックを解除し、トークアプリを開くと、ナオちゃんから2件来ていた。
‘‘カレーとチーズケーキ、同時にせいさくちゅー’’
‘‘9時までには唐揚げも作って待ってるね、ダーリン♪’’
1年経ってもラブラブなのがわかる文面を見た悠貴は口角を上げる。
‘‘大丈夫、9時までかからないから’’
悠貴は既読にならないうちに画面を暗くしてスマホをカバンに戻した。
「そろそろさぁ、ナオちゃんをオレに紹介してくれてもいいんじゃない?」
いきなりいじけた子どものような声で肩を叩いてくる伊月先輩。
「絶対イヤっす」
「なんでぇ? オレとユタの仲じゃん!」
あさりの大きさの瞳と左側1本の色が黒い上の前歯を見せて笑う伊月先輩を見て、悠貴は仏のように微笑んだ。
「カッコいい伊月先輩に取られたくないっすもん」
それを聞いた伊月先輩はハッとした後、みるみる顔が赤くなる。
「さっさと終わらすぞ……全部」
赤い顔のまま、パソコンの画面を見ながらさっきより速くタイピングする姿に悠貴は、はいと明るく返事をして、より早くタイピングを始めた。
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