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2月14日
Twitter企画 攻めから渡すバレンタイン
「今日から恋愛小説家と恋をします」
謙吾✕楓
執筆を終え、ドアの隙間から入り込んできたカカオの匂いにパソコンを閉じた手が止まる。
すん。と鼻を鳴らし、椅子を引いて立ち上がった僕は、ビターの匂いに誘われるようにふわふわした足取りでリビングに向かいドアを開けた。
辺りを見渡すと、テーブルに置かれたチョコレートが流れるタワーに目を見開く。
タワーから流れるチョコに、執筆の忙しさから朝から胃に何も入れてないことを舌から唾がわいてきたことで気づくと、平行して腹の虫も鳴いた。
「お疲れ様です!執筆どうですか?」
「うん、一応ね…で?これは何かのパーティー?」
「今日バレンタインですからね!吉野さんが好きな苺をいっぱい用意してチョコのフォンデュにしてみました!」
元気よく笑った彼にぴくんぴくんと動く耳とふりふりしている尻尾が見えてきた。
嬉しそうに笑う彼と大好きな苺。
こんな幸せなバレンタイン貰えたら僕のが渡せなくなるじゃないか…ホント、ズルいよね。
★★★★★
Twitter企画 受けから渡すバレンタイン
「今日から恋愛小説家と恋をします」
謙吾✕楓
チョコレートフォンデュに吉野さんは凄く喜んでくれた。
大好きな苺を食べている吉野さんは、すごく幸せそうで、お馴染みのエンジェルスマイルは拍車がかかっていて俺の心臓はドキドキが止まらない。
更にそのドキドキを上回る小さな箱の贈り物。
青い色のリボンを解き、蓋を開けると空の青さに似た小さなピアス。
「ずっと渡そうと思っていて…でも、別につけなくてもいいから貰ってくれる?」
優しい言葉と声に俺の決意が揺れそうになる。
母親の形見のピアスに触れ、お礼を言った言葉は小さく、それでも吉野さんは優しい笑顔でありがとうと頭を撫でた温もりに、溢れ出そうになる涙を抑えるためにぎゅっと唇を噛み締めた。
もう、幸せになってもいいかな?
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