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第16話

手の中のリモコンのスイッチを押した。 微かな電動音と共に、カーテンが上がっていく。 空に浮かぶ半月は、上弦の月 月の隣で寄り添うように、明るく輝く星がある。 「木星だよ」 触れるだけのキスが舞い降りた。 「忘れるんじゃないよ」 額にも口づけを施されて、深く抱きしめられた。 「君と共に見たかった。今夜の空を」 月と木星 「私達が結ばれる夜だ」 隣同士で、互いに引かれ、引き付け合いながら 月と土星は交わらない。 引力に引かれ合いながら…… その軌道が交わる事はない。 それでも星は寄り添っている。 「私の子供を産んでくれないかい?」 月と土星が交わらないように 願いが交わる日は訪れない。 俺は、男だから……… (あなたの願いは叶えられないよ) ごめん 男でごめん あなたの遺伝子、残してあげられない。 木星の光を掻き消す真っ赤な火が、夜空に流れた。 「火球と言うんだ」 なぜ、あなたの声は優しいんだ。 こんなに胸が痛いのに。 痛みすら、一瞬忘れてしまうほど 「マイナス4等星以上の明るい光を放つ流星をそう呼ぶ」 流れ星に願いをかけると、願いが叶うというけれど 「叶うといいね」 願いは叶わない。 あなたの言葉は残酷だ。 火球が消える寸前に、涙が流れた。 一筋……… 「すまないね、お前に怖い思いをさせた」 頬に落ちる涙を指がすくいとる。 「今夜はなにもしない」 涙の痕を舌が辿る。 「お前を抱きしめて眠るよ。怖い思いはさせないから……許しておくれ」 これからの行為が怖いんじゃない。 俺はむしろ…… なのにどうして俺は…… 思いを、 伝えなかったのだろう。 ………………好きになるのが怖い。 俺はもう、誰も好きにならないと決めたんだ。 あの日 ごめん、三上……

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