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第17話

『あなたに会うまでの数ヶ月間……。私はこれを食べなが待つわ♡ふわ、さくっ!の新食感、マシュマロクッキースマイル、好評発売中!!』 「僕は良いと思いますよ?」 隣でカフェオレを飲む恵花が意気込んで言う。 「マシュマロの中にクッキーが入ってるなんて斬新ですし、チョコ入りがレアというのも良いですね」 部屋の机には大きなビニール袋が置かれている。ピカピカマーケットの文字を押し上げてマシュマロクッキーの黄色いパッケージが見えていた。 「弟たちや妹たちに会う度にあの台詞を言われるんだ……。俺は魔法少女なんか興味なんかないのに……」普通の女の子から魔法少女に変身した少女がCMで『待つわ』のセリフと共にお菓子を食べるのが巷では流行っていた。キャッチーなCMは社会現象になり、雑誌でも取り上げられ、そのインタビューに答えてきた後だった。 頭を抱えると恵花はまたカフェオレの口をフーフーとし、飲んだ。どうやらまだ熱かったようで舌を出している。 「まあ、たくさん食べてくれて感想も伝えてくれる奴がいて嬉しいよ」 柔らかい髪が指を通る。ふわふわとした手触りに撫でているこっちが癒されていた。ふっくら頬だけじゃなく、首筋にまで赤色をさし、恵花は顔を背けて席を離れた。 「おいおい、いつもやってることだろ?」 「いえ、あの……。や、やっぱ……今日の僕、変、ですか?」 恵花は恐る恐るといった感じで口にした。 「はっ?」 「今日の、僕は変ですか??」 声はあっちを向いているのに、その相手は俺だなんてどうかしてる。 「突然、なんでだ?」 椅子を動かし、肩を引っつけると耳が真っ赤にさせていた。可愛い。 「いつもの、可愛い僕じゃない、ですし……」 いつもの。数あるワードの中に彼の本心が見つかった。 「恵花、こっちを向いて言え」 「い、いや……」 「見ないと外で食べてやるぞ?」 作戦は成功した。勢いよく振り向いた彼はしまったと眉を寄せて困った顔をしている。俺はそのまま彼をベッドに押し倒した。 「俺がいつ変だと言った?お前は変じゃない。素直で可愛い俺の恋人だが?」 眼鏡越しでもよくわかる。少し潤ませたピンクの瞳は俺を捉えているが、それでも不安の念があると。 「茶色の眼鏡、めちゃくちゃ可愛いじゃねえか。俺のこともよく見えるんだろ?」 唇をより耳に近づけば恵花は俺の裾を掴む。 「真城さん、近い……」 「変なのはドキドキしているお前の方じゃないのか?」 「ん、っ……♡♡」 柔らかい唇はどんどんと深くなる。けど、今はやめておいた。離れると恵花は泣きそうな顔をしていた。 「そ、」 「そ?」 「そ……うです……、僕は真城さんに見つめられて、真城さんがクリアになってドキドキしてます……」 ボロボロと泣き出す恵花は胸の当たりをぎゅうと掴む。 「僕、目が悪かったんで……。今日こそホンモノの真城さんを見るために掛けたんです。でも、余計にかっこよく見えて、真城さんの目に僕が入っていると思うとドキドキします……変なのは、僕です……。ごめんなさい……」 「すまない。少しやりすぎたな」 茶色の眼鏡の縁を少し上げ、舌で涙を掬いとる。わずかに甘い味がした。随分と俺も意地悪になったものだ。どうやらその眼鏡は彼のお姉さんからのクリスマスプレゼントだったらしい。 「真城さん、いじめないで……」 「分かった分かった。でも、これはいじめじゃないぞ?」 ベッドから一旦退いた俺は、隣に置いてあったバッグの中から小さな箱を取り出し、座った恵花の前に出す。 「?なんですか……?」 恵花は不思議そうな顔をしながらも、震える手でピンクのリボンを解く。雪のような白い箱をゆっくりと開いた。 「メリークリスマス、そして、誕生日おめでとう栄太」 恵花はそれと俺を何度も交互に見た。何度も何度も。 それから大きな目から綺麗な涙がぼろぼろと溢れる。 「俺と一緒に生きてください」 彼が握りしめた銀色の鍵はこの世に二つしか存在しない。俺はずっと愛しい人を抱き締め続けていた。

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