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19《独身同士》
「そういえば、国近さんは結婚してるんですか?」
雰囲気を変えるように聞いてくる。
「俺もしてないよ」
「マジですか!」
とたん笑顔になる東洞。
「なんだその嬉しそうな反応は…」
「あ、すみません…独身仲間がいたなぁとか思って…なんで結婚しなかったんですか?」
「そうだな、やっぱり罪悪感からかな、ゆたかを殺しておいて自分には、新たな家庭を作る資格はないと思ったから…」
ずっと悔やんできた想いの端を伝える。
「そんなことはないでしょうに…でも赦して貰えたんだから今からでも恋人作る気あるんですか?」
こちらを覗き込むように聞いてくる東洞に、首を横に振り…
「ないよ、もういい歳のオヤジだしな…恋する感覚も忘れてしまったからな」
「なるほど…でも僕は国近さんは結構魅力的だと思いますよ、今からでも頑張ってみたらどうですか?」
なぜか楽しそうに勧めてくる。
「バカ言え…ガキのくせに…」
その額を軽くこずいてやる。
「はは…」
苦笑いな東洞を横目に…
「……、お前は…なんで俺に力を貸してくれたんだ?最初、俺はお前にあんなに酷いことを言ったのに…」
どうしても聞きたかった…
最初はどちらかと言うと避けられていたのに…
「うーん、確かにあの瞬間は傷つきましたけど、国近さんの流れてきたオーラがとても綺麗だったんです、綺麗というか哀しい感じで…」
「オーラ…」
「だから、きっとこの人は、昔見えないものを信じていた時期があるんじゃないかなって…」
「お前にはなんでも分かるんだな…、ゆたかが死んだ後…俺は毎晩マンションに通ったんだ…幽霊でもいいから会いたいって願って…でも、いくら望んでもゆたかの姿は見えなかった…ゆたかは俺に絶対言いたいことがあるはずなのに出てこないのは幽霊なんかいないからだ…って決めつけて…」
「うん、」
「すまなかったな」
「いえ…まあ、そうでなくても、あんなもの背負って仕事してる国近さんをみたら、やっぱり手を貸したくなりますよ」
そう思い出すように笑って話す東洞。
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