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第4話

「こ、っ…これ、なんっ…」  問おうとした声が裏返る。  目の前のぶよぶよした塊は現実感がなさすぎて、自分の格好と相まって、いっそギャグなんじゃないかと思う。  だが、脳内に響く美声は、無慈悲だった。 『そいつを倒せたら解放してやる。簡単なルールだろう?』  ガラン、とどこからともなく放られた剣は、金の装飾のついた両刃のショートソードだった。  何故、こんなことになってしまったのかと一瞬悲観しかけて、思い直す。  問答無用で触手に捕えられた前回とは違い、今回は戦うという選択肢があるのだ。取り敢えずは、抗ってみるべきだろう。  まどかは剣を拾い、見よう見まねでかまえてみた。  なんといっても相手はスライムだ。  スライムといえば、ゲームなどでは初期の敵だというイメージが強い。  剣を持ったことなど当たり前だが初めてだが、そういう人々が遭遇するモンスターのはず。 「(俺にも倒せる……かも?)」  だが、その甘すぎる希望はすぐに打ち砕かれた。 「うっ………」  剣が、重い。  しかもスライムは斬りつけてもすぐにくっつき、復活する。  相手から何かしてくることはないが、倒すことはできずにただ体力を消耗していくばかりだ。  目も口もない、ただただぶよぶよした物体のどこにダメージを与えれば致命傷になるのかなど皆目検討もつかず、まどかは途方に暮れた。 「(…くっつかないくらい細切れにすれば…?)」  息を乱しながら、思いついたことを上がらなくなってきている腕で試してみる。  何度も剣を振り上げ、辺りにはスライムの肉片が散らばった。 「(動かなくなった…?)」  やったか?と思った瞬間だった。 「なっ!……や、やめろっ……!」  分裂したスライムがまどかの足元に我先にと集まってきて、慌てる。  振り払って抵抗したがみるみるうちに捕らえられ、押しつぶすようにして囚われてしまった。 「い、やだ……!」  這って逃げようとした両手首をべたりとまとめて拘束されて、足首は地面に貼り付くようにしてスライムがまとわりつく。  四つん這いになり、尻を突き出すという屈辱的な格好にカッと身体が熱くなった。  分裂していたスライム片達はまどかを押しつぶしたまま再び結合していく。  ふと、ぶよぶよしているだけだったスライムが滑りを帯びたのを感じた。  のしかかったスライムから分泌される粘度の高い液体が、体を伝い、熱を灯していく。  体の奥から熱を強制的に引き出されるような感覚に、覚えがあった。 『催淫効果のある分泌液だ。楽しめ』  あの時の九頭龍の声がフラッシュバックする。  なす術なく昂ぶっていく体を、絶望とともにまどかは感じていた。

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