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親衛隊総長、塚田くんの決意

 もう許せない。  我慢も限界だ。  無知厚顔、傍若無人、得手勝手、ついでに我儘放題な転校生に振り回されて早数ヶ月。  生徒会の皆さまは、あのあざとい悪魔に心奪われ、骨抜きにされている。  それに嫉妬した一般生徒だけでなく、栄えある親衛隊隊員の中にも、隊則を破って好き勝手に振る舞う者が続出。  学園の平和はすっかり乱されてしまった。 「塚田総隊長……僕らこの先、一体どうすればいいんでしょう……」  生徒会長さまの親衛隊隊長である六実(むつみ)が、憔悴しきった顔でそう問うた。  会長さまは先日、全校生徒の前で 「転校生は俺のもの、手を出す奴は許さない!」  と声高に宣言し、学校中を狂乱の渦に落とし入れたのだ。  それについて非難や問い合わせが六実の元に殺到し、彼はここ数日まともに眠れていないらしい。  美しい(かんばせ)には、どす黒いクマがクッキリと浮かんでいる。 「僕もどうしたらいいのか……」  そう言ったのは副会長さまの元親衛隊隊長、高柳。  なぜかと言うと、現在は親衛隊そのものが存在していないためだ。  なんでも転校生は、自分だけを一途に想ってくれる男が好きらしい。  そのため副会長さまは、親衛隊なんか置いて彼にあらぬ誤解をされたくないからなどと言って、一方的に親衛隊を解散されてしまわれた。  しかし本音は、親衛隊の苦言に嫌気が差したのだろう。  それが証拠に、身軽になった今では毎日のように転校生のお尻を追いかけ回している。  嘆かわしい限りだ。  だけど親衛隊が苦情を言うのも仕方のないこと。  誰か一人に行きすぎた寵を与えてしまえば、他の生徒が嫉妬に狂って何をするかわからない。学園の秩序を守るためにも、親衛隊は時に苦言を呈さなければならないのだ。  現に一方的にさせられた親衛隊員はと言うと、泣き喚く者、実力行使に及ぼうとする者、裏で暗躍する者と、各々勝手に動き回るようになってしまったため、学園内は阿鼻叫喚の地獄絵図、混乱なんて言葉じゃ表せないくらい大変な状況に陥ってしまった。  それがわからない副会長さまでもあるまいに……全くもって嘆かわしい限り。  副会長さまほどではないが、書記さまと会計さまも似たり寄ったりで、親衛隊内は混乱の極みにある。  ついでに言うと風紀委員長、同副委員長まで同じような状態のため、風紀をアテにすることはできない。  つまり今、学園は未だかつてないほど未曾有の大惨事と化しているわけである。 「塚田さま……」  皆が縋るような目で僕を見る。  今まで一緒になって学園の治安を守ってきた仲間たちが窶れ果て、打ち(ひし)がれる姿を見ると、胸が潰れる思いだ。 「皆……今までよくやってくれた。ここから先は僕に任せて、君たちはゆっくり休んでくれ」 「ありがとうございます!」  涙を流しながら頭を下げる一同。  僕は近ごろすっかり手放せなくなった胃薬を四錠口に放り込むと、転校生の待つ裏庭へと足を運んだ。  彼のことは事前に手紙で呼び出した。 『一人で来るように』と念を押してみたが、果たしてその通りにしてくれただろうか。  生徒会や風紀の皆さまが一緒だと、話が纏まらなくなって困るから、ぜひとも一人で来て欲しいのだが……。  裏庭に着くと、彼はたった一人で僕を待っていた。  ニヤリと口角が上がったのが見えて、僕の怒りがさらに増した。  ふてぶてしい奴め。  今日こそお前と決着を付けて、学園の平和を取り戻す!  覚悟しろよ、転校生!!

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