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覚悟してね、塚田くん

 そしてついに、塚田くんから呼び出しがかかった。  ゲームでもお馴染みの、裏庭だ。  やった、ついにこのときが来たぞ!!  俺はトイレで何度も髪を直し、服装をチェックして、裏庭へと向かった。  約束の時間までまだ三十分もある。  塚田くんは当然来ていない。  だけどこうして意中の相手を待つのもいい。  ちょっとデートっぽい状況に、心は舞い上がる一方。 「待った?」とか言われたらどうしよう。  嬉しくて死んでしまうかもしれない。  落ち着け、俺。はしゃぐ姿を見せて、塚田くんを幻滅させるんじゃない。  スマートに、男らしく、塚田くんと語り合うんだ。  そして十五分が過ぎたころ、彼はやって来た。  思わず口元がにやけてしまう。  約束の時間前に到着するなんて、律儀な奴だな、塚田くん。  さすがは俺の推し。そんなところが大好きだ。  一方彼はというと、俺を見つけた瞬間、美しい眉を少しだけ顰めた。  ゲジゲジでも見たような、嫌悪感溢れる目つき。  こう言う顔もまたよき。  彼の新たな表情を知れたことを、神に感謝した。 「待たせたね」  くぅぅぅぅーーーーー、「待たせたね」いただきました!! 「いいえ、全然」  俺は最大限の笑顔を浮かべて、そう答えた。 「君を呼び出したのはほかでもない」  あ、笑顔に対するコメントはなしか。  寂しいなぁ。  でもまぁ今日の本題はそこじゃないからな。  笑顔については今度感想をいただくことにしよう。  塚田くんの口からは、俺に対する厳しい意見がドンドン飛び出した。  しかしよくこんなに次々と出てくるものだ。  それだけ俺のことを見ていると言うことか。……照れるな。 「……と言うわけで、僕からは以上だ。何か申し開きがあるなら言ってみろ」 「えっと、俺は別に生徒会の人たちに興味はないから、現状にほとほと困ってるんですよね」 「はぁっ? あれだけ学園を引っかき回しておいきながら、生徒会の皆さまに興味がないだと?」  塚田くんの美しい顔が歪む。  あぁ、こんな顔させたいわけじゃないのに。  しかも俺の真意に全く気付いていないようだ。 「あいつらが勝手に構ってきて本当ウザいし、ほかの生徒には嫌な目で見られるし、俺も本気で嫌なんですよ」 「皆さまが勝手に構っている……だと?」 「えぇ、だから」  俺を奴らから保護してくれませんか……そう続けた言葉は、塚田くんの叫びにかき消されてしまった。 「ふざけるな! 君はわざとらしい行動で、生徒会の皆さまの気を引いているじゃないか! しかもそれが原因で学園の秩序は大いに乱れてしまった。この嘆かわしい現状の原因が君であることを、もっと自覚したまえ!」  おっと、今何やら聞き捨てならないことを言われたようだぞ?  俺が生徒会の奴らの気を引いている? そんなわけあるか!  あいつらは俺が何もしなくても寄ってくる、羽虫みたいなものなんだよ。  それを俺が誘っているように言うだなんて……いくら塚田くんでも、言っていいことと悪いことがある。 ――これは少し……身をもって理解させた方がいいようだな。  まさかの言葉に怒りを顕わにする俺に気付いた塚田くんは、少しだけ焦った顔をしながらも 「とにかくこれまでのような行動は謹んで」  と言って、この場を立ち去ろうとした。  その手をハシッと掴んで、逃がさないようにする。 「さ、逆井(さかさい)くん……?」 「塚田くん、俺は本当に慎まなきゃいけないような行動はしていないよ?」 「手を、離して」 「それに俺は本当に、あいつらのことなんか好きじゃない。好きなのは……君だよ」 「えっ」  驚く塚田くんを強引に引き寄せて、噛みつくようなキスをした。 「んっ……んむぅっ……!!」  一瞬固まった塚田くんだったが、すぐに気を取り直して俺から離れようと身を捩った。  そうはさせるか。  俺は塚田くんの頭に腕を回して固定しながらキスを続け、もう片手は腰に巻き付けて動きを封じた。  もちろん舌もぶっ込んで、口内中を舐め回す。  唇を離したころ、塚田くんはすっかり蕩けきった顔をしていた。  顔ばかりか、首まで真っ赤に染まっている。  飲み込めなかった唾液が顎を伝ってポタリと落ちた。  エロい。エロすぎる。 「……かーわいいー」  ただキスしただけなのに、チンコがギンギンにフル勃起してしまった。 「なっ……で、こんな……」 「塚田くんが変なことばっか言うからじゃん」 「変……?」 「俺が羽虫のこと好きだなんて言うから。ちょっとお仕置きしたくなっちゃった」 「羽虫?」  本気で意味がわからないような、戸惑った顔もまたよき。  てか塚田くんはどんな表情もいい。素晴らしい。最高だ。 「ほんとはさ、ちょっとずつお近付きになってから堕とそうかなーって思ったんだけど、作戦変更。俺がどれだけ君を好きなのか、まずは体からわからせてあげるよ」  半ば呆けたままの塚田くんを担ぎ上げて、寮へと向かう。  いつか使う日があったら……と買っておいたローションが、こんなに早く出番を迎えるとは思わなかったけど、こういうことは勢いも大切だ。  俺から逃げようと暴れる塚田くんに「学園内で騒ぐのは秩序を乱すことにならないかい?」と言うと、途端に大人しくなった。  さすがは秩序溢れる学園生活をこよなく愛する塚田くん。  おかげで要らない手間が省けてよかったよ。  移動中、植え込みに隠れて俺たちを見張っていた奴らに 「そういうわけで、俺は生徒会なんかじゃなくて塚田くん狙いなんだよね。俺の邪魔をするやつは許さないって、みんなに広めといてよ」  と言い置くことも忘れない。  奴らはいい仕事をしてくれた。  翌日には学園中にこのことが知れ渡り、それが原因でまた新たな騒動が巻き起こるわけなのだが。  でも今は、塚田くんを攻略することの方が先決だ。 「俺が本気だってわかってくれた?」 「あぁん、やっ! そこやらぁぁぁ!!」 「やだじゃないでしょ? 気持ちいいでしょ?」 「ひぁっ、もぉやめてぇぇぇ!!」  泣いたって許さないよ。  せっかく転生できたんだ。俺が塚田くんのことを幸せにしてあげる。  断罪、退学なんて絶対にさせないから、安心して学園生活を謳歌して欲しい。  その為にはもっといっぱい愛して、俺なしじゃ生きられない体にしないとな。  絶対に逃がすつもりはないから、覚悟してね、塚田くん。

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